翠玲 壱 ページ34
「...え？」
なんですって？と言いたげな、驚いた表情をAは浮かべる。
「翠苓が...死んだ？」
「ああ。刑部の者が乗り込んだ時、すでに寝台の上で倒れていたらしい。
医官によって死亡が確認され、床に転がっていた杯には毒物が含まれていた」
「この後はどうなるのです」
「今は獄中死した罪人のための安置所に置かれている。
翠苓は棺に納められたまま刑を受ける。
今日明日中に火刑に処されるだろう...まあ、火葬だな」
顔をしかめて壬氏が言う。
「それで、つかまったのは彼女だけですか？」
「ああ、他にかかわったとされるような人物は出てこなかった」
(彼女一人？)
Aは眉間にしわを寄せた。
祭祀中の暗殺未遂。それは周到に用意されたものだった。
礼部の長官の死、後任者の昏睡、祭具の作成を請け負っていた細工師の死、倉庫の小火と盗難事件。
一見無関係そうな四つの事件が実はすべて暗殺を目的とした布石だったとするなら、そんなことを彼女一人でできたはずがない。
(では、ただのとかげの尻尾切りかしら)
翠苓に目立つことは全部やらせて、調べても見つからないような手引きのみを主犯の者たちが行う。
そして、万が一にも翠苓から自分たちがたどられないよう、翠苓のみ切って捨てた...ありえない話ではない。
でも。
(あの挑むような口調...)
"あなた薬師だって聞いたけど。どれだけの腕前なのかしら"
Aはその言葉を反芻した。
「壬氏さま、お願いしたいことが。翠苓の検死をした医官と話をさせてください。
翠苓の死体のある部屋で」
Aは口角を上げて言った。
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作者名：泉 | 作成日時：2024年2月2日 10時
