傾国のひとりごと肆 (ページ29)

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(主上は寛大なお方、首が飛ぶにしても嘆願すれば私一人で済むはず)

「こうしているうちに中で何かあったらどうするのです」

がくがくとおぼつかない足で一生懸命体を支えながら、Aは訴える。

「中の方の身に何かあれば。その方が一大事ではありませんか」

(ああ、でも首をはねられるより、壬氏さまに頼み込んで毒殺にしてもらえないかな)

だれがお前のような小娘の言うことを信じられるか、と怒鳴る声もぼんやりとしている。

だんだんと吐き気もしてきた。

Aがあきらめかけた時だった。

　

　

「私なら、どうだい？」

こつこつと階段を上ってくる音がする。

「年若い娘を殴るとはどういうことかな。
...だれが、やったんだい？」

変人軍師の声だ。

ら、羅漢さま、と軍部の男たちが青ざめる。

羅漢は三白眼で男たちをぎろりと睨むと、

「通してあげなさい、私が責任を取るから」

そう言って男たちを下がらせた。

(...嫌なのに借りを作ったわね)

でも、背に腹は代えられない。

(間に合え...！)