傾国のひとりごと参 (ページ9)

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　　　肆ページ9

いじけた主を見るのは、今日で何日連続だろうか。

仕事の間違いも多くなった。

それはまだ小さいものであるのでなんとかなっているが、執務室に戻ると部屋の隅に座り込み、陰気な空気を醸し出すのは勘弁願いたい。

胞子でも飛ばさん勢いである。

麗しき天女の笑みと蜜の声を持つ青年はそこにはいない。

Aは解雇通告の翌週に出て行った。愛想はないが、礼儀正しく、世話になったところに一軒一軒回って行ったらしい。

玉葉妃は渋っていたが、壬氏が決めたことだと聞くととりあえず引き下がった。「後悔しても知らないわよ」とご丁寧に捨て台詞を残して。

「やっぱり引き止めればよかったのでは」
「なにもいうな」

高順は腕組みをし、眉間のしわを深くする。

お気に入りの玩具をなくしたときは、どんなものだったか。
より新しい珍しい玩具をあたえるのに、どのくらい苦労しただろうか。

玩具といっしょにしてはいけないのかもしれない。

壬氏は娘を道具として扱いたくなくて、引き止めるのをやめたのだった。そこで、新しい毛色の違った娘をあてがえたところで何になろう。

そもそもあの娘の代わりなど、到底見つかりそうにない。歴史書を見返して、張り合える人物が数人いるかどうかである。

まったくもって厄介だ。

「ならば…本物を用意するしかないか」

壬氏に聞こえない声でつぶやくと、ふとある人物を思い出した。

娘の実家をよく知る武官である。

「手間のかかる」

苦労人、高順は首の後ろをかいた。