傾国のひとりごと参 (ページ8)

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　　　参ページ8

Aは小蘭と別れると、普段会おうとか思わないその人物を探すことにした。

「珍しいな。息が荒いぞ」

後宮の正門で、麗しき宦官は軽く言ってくれる。
Aは、翡翠宮のほか四夫人の屋敷をすべて周り終えた後だった。

「……っ」
「落ち着け。...汗で化粧が取れかかっている」

天女の顔に、いささか焦りを見せている。

「おっ、お話が、あ、あります」

Aは切れ切れに言葉をつむぐ。

壬氏は目を細めた。なぜだか、憂いを含んだ顔だった。

「わかった。中で話そう」

通されたのはいつもの執務室である。

「今度の大量解雇について聞きたいのだろう」
「はい。私はどうなるのでしょうか」

返事の代わりに壬氏は書類を見せる。上質の紙に書かれた中に、Aの名もあった。

「...つまり解雇というわけですね」

(どうしようか)

解雇といわれてやめてくださいと言える立場ではない。自分はたかが女官だということは重々承知している。
無表情のまま、媚びる目をしないようにこらえた。美しい紫水晶の瞳が揺れる。

「どうしたい？」

うかがい聞くその声に、いつもの甘さはない。むしろ、逆に甘えるような少し幼い声だった。声色と違い、顔だけは真剣に固まった顔をしていた。

「私は、ただの女官です。壬氏さまの決定に従うまでです」

(命じられればなんでもやる、だから、解雇にしないで)

青年の表情は、固まったままで、ふと視線をそらすと小さくため息をついた。

「わかった。退職金ははずもう」

青年の声は冷たく、うつむいて表情は読み取れなかった。

交渉は失敗した。