傾国のひとりごと参 (ページ7)

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　　　弐ページ7

李白ののち、いまだ上客を送り込んでいない。
それが問題である。

Aは花街に売られる身ではないが、李白の話を持ち出して、その借金返済を名目に年季奉公を強要される可能性が大いにあるのだ。
薬屋としての売り上げだけで返済するなど不可能だからである。

緑青館で働くことになったとしても、おそらく体を売ることはない。

もとより天を突き破るほどのAの価値をさらに上げたい強欲婆としては、Aを店に入れたとて、せいぜい緑青館の看板にしたり、たまに客と茶を飲ませたり、碁を打たせたりというくらいではあろう。
それでも薬を調合できない、というのは辛い。生きがいを失うようなものである。

短期就労で許してくれるだろうか？
いや、あのけちな婆のことだ、その可能性は低い。
衣装だのなんだのふっかけられて、さらに借金が膨らむだろう。

そうしたら少なくとも一季、つまり一年は必ず働かねばならなくなる。
一年間もあればAほどの容姿と教養の持ち主ならばたちまち噂になって全土に広がり、やめるにもやめられなくなる。

そもそもやり手婆はAを妓女にするために育てたようなものなのである。

Aは幼いころから舞に二胡に、とにかく色々叩き込まれ、齢十を超えたあたりから、禿のように妓女見習いらしきことをさせられていた。

妓女は相場でいうと齢十六、七ごろからなるものだという。
それなのになぜ今まで妓女にならなくてもよかったのかというと、婆の方に、Aを強制的に働かせる口実がなかったからである。
それができてしまった今、やり手婆はしめしめと思っていることだろう。

せめて、あと数か月だけでもここにおいてもらえれば、何か出会いがあるかもしれない。そうすれば客を送りこんで借金も返すこともでき、妓女になる必要もなくなるのに。