後宮授業 壱 ページ36
「一体、なにがおきているんでしょうか」
「わからんな」
問いかける高順に、首を傾げて壬氏は答える。
場所は、後宮内の講堂前。
妃たる勤めを果たすべく、現在、上級妃たちが学んでいる。
周りには、閉めだされた宦官やお付の女官たちが、壬氏と同じ表情をしている。
秘密にされると気になるもので、扉に耳をそばだてるものさえいる。
ちなちに壬氏もその一人である。
一体、なにが。
好奇心を掻き立てられるひとつの理由に、講師がそばかす顔で珍しい瞳の若い女官であることがあげられた。
始まりは、十日前にさかのぼる。
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短い休みを終え、Aが職場に戻ってくると、難しい顔の壬氏がいた。なにやら、深刻な面持ちでAを見ている。
「新しい淑妃が来たことで、妃教育をしたいそうなんだが」
「そうですか」
Aは興味なさそうに答えると、床の拭き掃除を始める。
下女の仕事を奪うかのように、親の仇かのように掃除をする。
それが、壬氏の部屋付になってからのAの日課である。
他に仕事もあるような気もするが、下女としての仕事ばかりやってきたAにとって、正直なにをすればいいのか思いつかない。
とりあえず掃除しておけばいいだろうの勢いでやっている。
たまに壬氏が不満そうな顔をするが、何をしろと言われない限りする必要はないとAは考えている。
元々、壬氏の部屋には最低限の召使いしかおいておらず、Aなどいなくても壬氏のばあやである水蓮がいれば事足りるくらいだ。
働き者のばあやの仕事を奪うのは悪い、足腰にきつい仕事はともかく、Aは自分の領分をわきまえて行動すべきだと思っている。
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作者名:泉 | 作成日時:2024年1月27日 22時