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   参 ページ33

(政治的暴力(テロ)の疑いありとみているわけか)

概ね平和な時代であるが、皆が不満を持たぬわけではない。
異民族はたまに襲ってくるし、飢饉や干ばつもなくはない。

先帝の時代は、毎年行われる女官狩りによって、農村部の嫁不足が深刻になったこともあった。
他にも、奴婢の廃止も行われた。これで商売が成り立っていた商人もいる。

未だ恨むものも少なくなかろう。
先の皇帝が現世からたたれてからまだ五年ほど。
先の治世が記憶に残るものは多い。


「おい、なにやってんだ。近づくなって言っただろ」
「あっ、ちょっと気になりまして」


Aは、壊れた窓から中をみる。焼け焦げた荷が積まれていた。
床に芋が転がっていることから、食糧庫だとうかがえる。芋がこんがりを通り過ぎて消し炭になっている。
実にもったいない。

他に落ちているものは、とAは床に転がった棒のようなものを拾う。


(象牙細工? 煙管かしら)

「勝手にうろうろするな」

李白の言葉を無視するように、Aは腕を組む。頭の中で何かがつながった。

「話聞いているのか」
「聞こえてますよ」


聞こえているが、聞こうとしないだけである。自分で思うのもなんであるが、実にたちが悪い。

 Aは、倉庫から離れると、反対側の倉庫のほうへと向かう。無事だった荷物はこちらに積まれているようだ。

「これ、もらっていいですか?」
 
 Aは使われていない木箱を指さした。果実かなにかをいれておくためのものだろうか、しっかりと作られていた。
 
「いいんじゃないのか? んなもんどうすんだ?」
「あとで説明します、これももらいますね」

Aは木箱の蓋になりそうな板を見つけ出した。

「槌と鋸はありませんか? 釘も必要ですね」
「何する気なんだよ?」
「ちょっとした実験です」
「実験?」

李白は首を傾げながらも、好奇心のほうが上回ったらしく、協力してくれた。
部下もなんだ、この女官と不満そうに見ていたが、上司も頭が上がらない様子を察し、用意してくれた。

Aは真ん中に穴のあいた板を作り、それを空の木箱の蓋にして打ち付けた。

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作者名: | 作成日時:2024年1月27日 22時

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