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宮廷官女 壱 ページ21

「てっきりまた後宮に戻るものと思っていたのですが」

 Aは、地味だが麻ではなく木綿を使った衣を着ていた。
後宮女官の下働き時代は、麻を着ていたため想像以上に待遇がいいことがわかる。


「いえ、一度やめさせた手前、そう簡単に戻ることはできませんので」


 宮廷内を案内してくれるのは、武人のように凛々しいが誰よりもまめな高順だ。

いつもの地味な官服を着て、建物の名前と部署をAに教えていく。


その数は広大な宮廷を考えると、手足の指の数では足りないだろう。

Aとしては、正直自分の興味を引くもの以外はそれほど真剣に聞く気はない。

聞き流すだけでもだいたいは覚えられるので、聞いているふりをして頷きながら庭園の植生を目視で調べる。

(やっぱり後宮のほうが材料になるものがたくさんあるわ)

 昔、羅門が後宮にいたときに、使える植物を移植していたのだろう。限られた空間ながら、数多くの薬草が生えていた。

 次々と高順が説明していく中、Aはちりちりと首筋に感じるものに気が付いた。
目線だけ斜め後ろにずらすと、女官たちがAたちを見ていた。
いや、正確にはAだけだろうか、その眼差しはなんともいえない嫌なものである。


男同士にしかわからない感覚があるように、女同士にしかわからない何かというものがある。

男が相手に対する攻撃を肉体に行うのに対し、女が相手に対する攻撃は精神に行うものが多い。


(やーな感じだわ)

 Aはちらりと舌をだしながら、次の部署へと歩いていく高順のあとを追った。

     弍→←     参



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作者名: | 作成日時:2024年1月27日 22時

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