ー翔side ページ1
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物心つく頃から呪文のように聞かされてた言葉がある。
「男の子なんだから女の子に優しくしなさい」
「男は女を守る為にいるのよ」
「男の子は女の子を大切にしなきゃダメよ」
母さんの言葉だった。
一つ年下の弟・和也と俺の二人兄弟だったからか、
母さんは小さい頃から
毎日のように俺達に
そう言って聞かせた。
だから俺もそれが当たり前だと思って
今日まで生きてきた。
「翔ちゃんってさ、Aの事好きなの？」
弟である和也が俺の目の前であっけらかんと聞いてくる。
何の前触れもなく。
むしろ学校から帰って来た俺に
「おかえり」の声をかけるよりも先に、
俺の部屋に勝手に居座っていた後、
俺と目があって
この第一声。
部屋のど真ん中でひざ立てて
ふんぞり返って言うセリフでもないと思うし、
タイミングもなんかおかしいし…
本当に我が弟ながら
いまだにその神経は読めない。
和也「この距離でシカトすんなよ。」
翔「何だよ急に…」
学校の鞄を所定の位置に下ろして制服を脱ぎ、
和也に背を向けて部屋着を取り出す。
弟ではあるが
こいつは俺の事を兄として見たことはないだろう。
そのせいか、俺の呼び方もずっと「翔ちゃん」で…
兄貴やお兄ちゃんと呼ばれたことはない。
和也「いや、なんかさ？翔ちゃんってAの事好きなのかな〜って思ったから」
翔「まぁそりゃぁ…好きですけど。それが何か？」
最近のお気に入り部屋着ファッションは、
迷彩柄のスウェット。
楽だし脱ぎ着がしやすい。
和也「あ〜ヤダヤダ。これだから夢見るドウテーは手におえない」
翔「はぁ？」
完全家スタイルになって和也に振り返ると、
ふざけた声のトーンとは裏腹に
無表情のまま俺を見つめる和也がいた。
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作者名：砂希流
| 作成日時：2019年1月21日 22時
