７・素直じゃないチケット ページ7
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なんだかんだ言って、
このじいさんはいい人だと思う。
週刊誌の奴らが嗅ぎつけて
近所をうろついていたこともあったらしいけど、
変質者と勘違いしたふりして警察呼んだり、
ほうきで追い払ったりしてくれたらしくて…
昔から繋がりのある
近所のおばちゃんから聞いた話だけど、
「二宮さん知ってますよね？」って言われても、
「知らんわ！帰れ！」って
俺のこと、何も言わなかったって。
本当に嫌いなら多分、バラしたと思うし、
その方が金になったはずなのに…
じいさんはAと住み始めた時も、
俺が夢追い人で無職って言ったら
「彼女の負担が大きいから家賃はもっと安くていい」って言って、
とことん値切ってしまうたちで、
だからこのアパートに住んでる人は、
だいたい訳あり人で…
おかげでじいさんはいつも
ギリギリの生活ってのも俺は知ってる。
だから……
あえて今は手渡しで家賃渡して、
少しだけその迷惑代を入れてるつもりなんだ。
「今度、武道館でやるんだLIVE。Aと来てほしい。」
「あ？」
「じゃないとあいつ、またいなくなりそうだから。」
じいさんの家に家賃持ってくみたいに
チケットを渡した。
夜8時じいさんは寝る直前だったみたいで
部屋の中は真っ暗だった。
「大丈夫だろう。あの子はもういなくなったりしない。」
「…でも、念のため。」
「チケット代はいくらだ？」
「家賃と同じ。だから今月は無しってことでよろしく。」
「お前それを言いに来たのか。」
「ふふっ。そういうこと。じゃ、おやすみ。」
「ん。……頑張れよ。」
「…おう。」
素直じゃないんだと思う。
俺もじいさんも。
「見に来てほしい」って言うつもりだったのに、
自分らしくない気がして…
Aが逃げないために一緒に来てほしいって、
我ながら酷い言い方だな。
歌詞にも出来ねぇ。
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作者名：砂希流
| 作成日時：2018年10月11日 21時
