「一人で出掛けた日」 ページ8
二人が屋敷に住み始めて一ヶ月が経った。
「その格好も板についてきたな」
「ほっといてよ」
「釣れないな」
Aが与えた服は大人っぽくシックだが、なぜか太宰の雰囲気にこれでもかと合っていた。
一緒に過ごし、一ヶ月にもなれば太宰のAへの接し方も大分柔らかくなってきた。
最初は無口なだけかと思ったが、ただ緊張していただけのようだ。
「却説と、私もそろそろ出掛けなければな」
「?」
「遠くの街に用事があってな。
今日の夜には戻るが、一日だけ留守番を頼む」
Aは朝食を済ませると、食器を片付け、外用の服に着替えた。
太宰と色違いで購った砂色の外套を羽織ると、玄関の扉に手をかける。
其処には太宰の姿もあり、幼いせいかその表情は何処か寂しげだった。
「寂しいか?」
「そんな子供じゃない」
「ははっ、素直じゃないな。土産でも購ってきてやろう」
「ちょ、頭撫でないでよ!」
太宰を可愛く思ったのか、Aはわざとらしそうにからかい、優しく頭を撫でる。
むう、と唇を尖らしながら不貞腐れる太宰に微笑みながら、
Aは外へ出た。「いってきます」
ーーーーーー
ーーー
「着いたか」
本来は空を飛べばすぐなのだが、人目につくような行動は避けるべく交通機関に乗って片道二時間。
『探偵屋』と掠れて剥がれ落ちた看板の前に立つ。
其処はこじんまりとした所だが、煉瓦や漆喰は均等に敷き詰められ、いかにも立派という雰囲気を出していた。
此処へ来るのは始めてだが、何の躊躇いもなくドアノブに手をかけた。
目的は___
197人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼生。(プロフ) - 3年ほど前にこちらのお話しを拝見し、世界観に引き込まれました。3年間度々見たくなります。何回リピートしたか分かりません(笑)素敵な作品有難うございます。こんな数年も前の作品にコメントしてしまいすみません。心の支えを有難う。 (12月28日 19時) (レス) @page6 id: f9eaaebf52 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - 桜月さん» はじめまして桜月さん。私もこの作品を最後まで読んでくださってとても嬉しいです。これからも頑張ります。 (2019年6月25日 21時) (レス) id: 00e250021f (このIDを非表示/違反報告)
桜月 - はじめまして!まずは完結おめでとうございます。すごくいいお話でした、めっちゃ感動しました。とても素敵な作品でした、ありがとうございました!これからも頑張ってください、応援させていただきます! (2019年6月25日 17時) (レス) id: 0b13d6cbae (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - 青の兎さん» はじめまして青の兎さん。わたしもこれほど丁寧な感想をいただけてとても嬉しいです。これからも頑張りますので、応援してくれると嬉しいです。 (2019年6月25日 16時) (レス) id: 00e250021f (このIDを非表示/違反報告)
青の兎(プロフ) - こんにちは、初めまして。青の兎と申します。この作品を読み終わってから、これほど心温まるお話はないだろうと思いました。久しぶりに目を腫らすほど泣きました。とても最高です。そして、この作品に出会えた私は幸せ者です。これからも頑張ってください。応援してます (2019年6月25日 15時) (レス) id: c4e6688834 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:+アリス+ | 作成日時:2018年11月28日 15時