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「一寸背伸びをした日」 ページ22

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大切に育て上げた息子が色気を覚え始めたとき、その親はきっと卒倒するだろう。
何故って?今それに直面しているからだ。
太宰はついに十四歳になった。
勿論、年に一回の写真も撮った。
問題はその次の日だった。






「Aさん」


「なんだ?」


「人を口説く方法を探しているんだけど……」


「健全な十四歳が考える発想ではないことが判った」






つい最近まであんなに愛らしかった太宰が口説き?
目眩がするに決まってる。
だが、母性本能と云うものなのだろうか、
太宰が「お願い」と甘えてくるのに耐えられず、
思わず「判った、手伝ってやろう」と云ってしまったのだ。






「じゃあいくよ」





すると太宰はAにかしずき、その細い手をとった。
十四歳にしては大人っぽすぎる気がする。






「美しい。なんと気高く淑やかな女性だろう。
まるで月下に咲き誇る一輪の白百合のようだ。
……どうか僕とお茶をしてくださらないか?」





時が止まったかのように、時間が遅く感じた。
整った顔立ち故に、何故か緊張してしまう。
……すると太宰はいつもの様子に戻り、「どう?」と訊ねてくるのであった。
Aはいつもに調子を取り戻すと、取り合えず採点はするようであった。






「ま、まだまだだな」


「ええ〜」


「言葉が単純すぎる」






Aは冷や汗をかきながら太宰の頭をコツンと叩く。
太宰は唇を尖らせながら悔しがるのだった。
見た目はいくら大人でも、中身は年相応、まだまだ子供なのだ。






「どれ、私が手本を見せてやろう」


「?」






今度はAが太宰にかしずき、太宰の手を取るのだった。





「なんと美しき少年だ。
陶器のように整った顔立ち、まるで悪魔の持つ美しさだ。
そしてその愛らしい瞳、まるで天使のご加護があるかのようだ……」


「ッ……!?」






Aはすらすらと出てくる口説き文句を云うと、太宰の手に接吻を落とした。
それに太宰は少しばかり狼狽える。
だが






「どうか私とお茶を……否、心中をしてくれないだろうか?」


「えッ」






矢張りAはAだった。
曰く「その人の印象に残りたくば、心中くらい云わないとな」らしいが。
兎も角、何千年も生きた化け物相手に、
太宰は経験の差で負けてしまい少しばかりショックを受けていた。
そんな太宰にAは一言__





「私を口説き倒したかったら、私の身長を越してからにするんだな」

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蒼生。(プロフ) - 3年ほど前にこちらのお話しを拝見し、世界観に引き込まれました。3年間度々見たくなります。何回リピートしたか分かりません(笑)素敵な作品有難うございます。こんな数年も前の作品にコメントしてしまいすみません。心の支えを有難う。 (12月28日 19時) (レス) @page6 id: f9eaaebf52 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - 桜月さん» はじめまして桜月さん。私もこの作品を最後まで読んでくださってとても嬉しいです。これからも頑張ります。 (2019年6月25日 21時) (レス) id: 00e250021f (このIDを非表示/違反報告)
桜月 - はじめまして!まずは完結おめでとうございます。すごくいいお話でした、めっちゃ感動しました。とても素敵な作品でした、ありがとうございました!これからも頑張ってください、応援させていただきます! (2019年6月25日 17時) (レス) id: 0b13d6cbae (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - 青の兎さん» はじめまして青の兎さん。わたしもこれほど丁寧な感想をいただけてとても嬉しいです。これからも頑張りますので、応援してくれると嬉しいです。 (2019年6月25日 16時) (レス) id: 00e250021f (このIDを非表示/違反報告)
青の兎(プロフ) - こんにちは、初めまして。青の兎と申します。この作品を読み終わってから、これほど心温まるお話はないだろうと思いました。久しぶりに目を腫らすほど泣きました。とても最高です。そして、この作品に出会えた私は幸せ者です。これからも頑張ってください。応援してます (2019年6月25日 15時) (レス) id: c4e6688834 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:+アリス+ | 作成日時:2018年11月28日 15時

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