「過去を清算する日」 ページ13
「違っ私は……」
出てきた男はAにそう告げられたあと、誤魔化すように冷や汗をかきはじめた。
焦っている、きっと本当に太宰の父親なのだろう。
「息子が消えたわりには隈がない。
昨晩はさぞかし快眠だったのだろう」
「だから違うと」
「じゃあ何故血相を変えて私たちのもとに現れた?
津島家と私の一族はなんの関係も持っていない。
…となれば、矢張りこいつに用があったのではないか?」
Aは親指で太宰を指差すと、その男は途端に静かになった。
否定することを諦めたのだろう。
津島家は貴族の上位に上る名門一族だ。
Aの目の前にいる男は津島家の現当主である。
Aの目的は最初からこの男だったのだ。
そして化け物は更に男を問い詰める。
「津島修治、津島家次期当主の名前だ」
「な、何故その名を!」
「否、こいつにつける筈だった名前、違うか?」
男は血相を変えてAを睨み付ける。
太宰は血の気の無い顔をしながらAを見つめた。
何故その事を知っているのか?
隠してきた筈なのに……最初から全て見透かされていたと云うことか?
「津島家次期当主の津島修治。
だがその姿は世間には公表されていないが、
今日の祝宴会にて社交界デビューをする。
お前たちについては全て調べ尽くしている」
「止めろ!それ以上云うな!」
「息子が居なくなったのに今日息子を連れてくる。
これじゃあ辻褄が合わなすぎるが、こう考えれば納得がいく。
____こいつとそっくりの養子を引き取った、違うか?」
探偵も吃驚の推理に太宰は目を丸くする。
遅れて到着した津島家の奥方ともう一人の子供、
__太宰によく似せた少年が姿を見せた。
そう、こいつが偽物の太宰であり、これから本物になろうとしている、純粋無垢な子供なのだ。
「なっ何故この子が……この子は山に捨てた筈……」
「馬鹿ッ!口を滑らすな!」
「ほらな」
「ッ」
化け物はニヤリと白い歯を見せながら笑った。
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蒼生。(プロフ) - 3年ほど前にこちらのお話しを拝見し、世界観に引き込まれました。3年間度々見たくなります。何回リピートしたか分かりません(笑)素敵な作品有難うございます。こんな数年も前の作品にコメントしてしまいすみません。心の支えを有難う。 (12月28日 19時) (レス) @page6 id: f9eaaebf52 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - 桜月さん» はじめまして桜月さん。私もこの作品を最後まで読んでくださってとても嬉しいです。これからも頑張ります。 (2019年6月25日 21時) (レス) id: 00e250021f (このIDを非表示/違反報告)
桜月 - はじめまして!まずは完結おめでとうございます。すごくいいお話でした、めっちゃ感動しました。とても素敵な作品でした、ありがとうございました!これからも頑張ってください、応援させていただきます! (2019年6月25日 17時) (レス) id: 0b13d6cbae (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - 青の兎さん» はじめまして青の兎さん。わたしもこれほど丁寧な感想をいただけてとても嬉しいです。これからも頑張りますので、応援してくれると嬉しいです。 (2019年6月25日 16時) (レス) id: 00e250021f (このIDを非表示/違反報告)
青の兎(プロフ) - こんにちは、初めまして。青の兎と申します。この作品を読み終わってから、これほど心温まるお話はないだろうと思いました。久しぶりに目を腫らすほど泣きました。とても最高です。そして、この作品に出会えた私は幸せ者です。これからも頑張ってください。応援してます (2019年6月25日 15時) (レス) id: c4e6688834 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:+アリス+ | 作成日時:2018年11月28日 15時