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「正装に身を包んだ日」 ページ12

Aの屋敷は大きく立派だ。
洋風の煉瓦や白をベースに造られた壁、細かい装飾を施された窓や扉。
お伽噺に出てきそうな、立派な洋館だと断言できる。
だが今は自宅よりも一回り大きい城の前に立っている。
汚れ一つない積もりたての雪のように真っ白な壁、金で装飾された扉。
Aの屋敷が吸血鬼の出てきそうな館なら、この城はお姫様が住んでいそうなイメージだった。







「本来ならば参加は拒否するのだが…まあ、去年もそうしていたし」


「そんなに来たくないの?」


「ああ、きらびやかな場所はどうも性に合わんでな」







(A監修のもと)黒の正装でバッチリと決めた太宰は少し緊張しながらもAに話しかける。
元々秀麗な面立ちをしているため、こういう格好をしていても違和感はなかった。
そして話しかけられたAはワインレッドの気品あるドレスを身に纏い、黒の薔薇の飾りやレースなどでそれを一層に際立てていた。
Aは肌が白い、だからこそこのコントラストは百億の絵画にも勝るほどに美しかったのだ。






「まあ今回は獲物が美味しそうでな。
これを機会に貴様を社交界デビューさせるのもいいかと思ってな」


「うわっ面倒臭い…」







Aは鴉色の長い手袋をはめた細い腕で太宰の手を掴む。
大きな扉がギギッと重く開いた。
夜闇が深くなる外に、会場の暖かい光が差し込む。
二人は足を踏み出した。







「云い忘れていたが、ここにも人ではない者がいくつかいる。
食べられはしないが、悪趣味なやつらはお前を誘拐しようとするぞ」


「そんな宴会なんで来たの」








すると次の瞬間、二人を大勢のざわめきが包んだ。
先程まであんなに賑やかだったはずの観客も、
まるで化け物でも現れたかのような青ざめた顔をしていた。





「ど、どうして」


「これも云い忘れていたが、私はこの界隈じゃ『死神』と云われた化け物だ。
こういう宴会に参加することすら御法度、
何時も後ろ指を指されていたのだ」


「そうなの?」


「まあ、この膨大な力のお陰で誰も私に暴力を振るおうとしない。
だから私から離れないこと、いいな?」


「判った」







刹那、人混みの中から焦ったように誰かが出てきた。
それを見た太宰は瞳を大きく揺らした。
一方Aは愉快そうに口許を歪めた。
その人物は……







「どうやら獲物の方から此方側に出向いてくれたらしい。
____津島家の当主、こいつの実の父親だな?」

「過去を清算する日」→←「入水を止めた日」



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蒼生。(プロフ) - 3年ほど前にこちらのお話しを拝見し、世界観に引き込まれました。3年間度々見たくなります。何回リピートしたか分かりません(笑)素敵な作品有難うございます。こんな数年も前の作品にコメントしてしまいすみません。心の支えを有難う。 (12月28日 19時) (レス) @page6 id: f9eaaebf52 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - 桜月さん» はじめまして桜月さん。私もこの作品を最後まで読んでくださってとても嬉しいです。これからも頑張ります。 (2019年6月25日 21時) (レス) id: 00e250021f (このIDを非表示/違反報告)
桜月 - はじめまして!まずは完結おめでとうございます。すごくいいお話でした、めっちゃ感動しました。とても素敵な作品でした、ありがとうございました!これからも頑張ってください、応援させていただきます! (2019年6月25日 17時) (レス) id: 0b13d6cbae (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - 青の兎さん» はじめまして青の兎さん。わたしもこれほど丁寧な感想をいただけてとても嬉しいです。これからも頑張りますので、応援してくれると嬉しいです。 (2019年6月25日 16時) (レス) id: 00e250021f (このIDを非表示/違反報告)
青の兎(プロフ) - こんにちは、初めまして。青の兎と申します。この作品を読み終わってから、これほど心温まるお話はないだろうと思いました。久しぶりに目を腫らすほど泣きました。とても最高です。そして、この作品に出会えた私は幸せ者です。これからも頑張ってください。応援してます (2019年6月25日 15時) (レス) id: c4e6688834 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:+アリス+ | 作成日時:2018年11月28日 15時

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