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三十七話「妹への思い」 ページ38

樋口さんが持っている銃を此方に向ける。
全部嘘だった。騙されていた。
あの笑顔も言葉も……どうしよう、体が動かない。







ドガガガガガガガッ







耳が突き刺されるように痛くなるほどの銃声が響く。
頭で処理しきれないほどの出来事が目の前を通りすぎる。








「え、ナオ……ミ…さん」







目に写る現実が理解を拒否しようとする。
嘘であってくれ。夢であってくれ。
ナオミさんが谷崎さんを庇って銃弾を浴びたなんて………信じたくないから。








「兄様……大丈、夫」


「ナオミッ!!」







ナオミさんが倒れる。
谷崎さんが必死に声をあらげてナオミさんの名前を呼ぶ。
さっきまで元気にしていた人間が、今まさに死にそうになっている。
先刻までの記憶が全部抜き取られたような、そんな喪失感がする。
まるで数年前と同じ感覚が全身を走るようだった。
怖い。信じたくない。いなくならないで。目を覚まして。









「ど、どどうしよう……し、止血帯、敦くん止血帯持ッて無い?
いや先ず傷口を洗ッて……違う、与謝野先生に診せなきゃあ…」









体中から震えが止まらない。
その場にペタンと座り込み、動けなくなる。









「そこまでです」







樋口さんが谷崎さんの頭に銃を向ける。






「貴方が戦闘要員でないことは調査済みです。
健気な妹君の後を追っていただきましょうか」

「あ?」







谷崎さんが今まで感じなかった殺気で樋口さんを睨み付ける。
優しいお兄さん、と云うイメージがガラガラッと崩れた。









「チンピラ如きがナオミを傷つけたね?」

「!」









谷崎さんがナオミさんを抱き上げてしてこう云った。









「『細雪』」

「緑色の……雪?」







思わず声に出てしまった。
そう、谷崎さんが『細雪』といった瞬間、緑色の雪が降りだしたのだ。
何でこんな季節に?
そう思ったが、これが谷崎さんの異能、と考えればつじつまが合う。








「敦くん、Aちゃん。奥に避難するンだ。
こいつはボクが__殺す」

三十八話「希望と絶望」→←三十六話「逃げ道は確保するもの」



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設定タグ:文スト , 中島敦 ,   
作品ジャンル:アニメ
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+アリス+(プロフ) - 野良神さん» 誤字の指摘ありがとうございます。すぐに直しますね。 (2018年12月24日 10時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)
野良神(プロフ) - 13ページの異能力が維能力になってますよ! (2018年12月24日 9時) (レス) id: 98ee09b097 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - issuさん» 判りました。こちらの不具合かもしれないので直してみます。この作品を見てくださりありがとうございます (2018年10月13日 21時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)
issu(プロフ) - はい! (2018年10月12日 22時) (レス) id: 9f68ff9d03 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - issuさん» イメ画は設定のところにあるもののことでしょうか? (2018年10月12日 20時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:+アリス+ x他1人 | 作成日時:2018年4月6日 17時

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