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三十六話「逃げ道は確保するもの」 ページ37

薄暗くてじめじめした路地裏を歩く。
音の違う足音が路地裏にこだまする。
一言で云うなら……





「なんか……鬼魅の悪い処ですね」





そうそれだ。
まるで谷崎さんが私の心を代弁するかのように話してくれた。
本当に鬼魅が悪い。
少し怖くなってお兄ちゃんの服の袖を掴んだ。
それに気づいたお兄ちゃんがクスリと笑う。





「(まだまだ子供だなぁ……)」





絶対失礼なことを考えてる。
でも、お兄ちゃんの微笑んだ顔が安心感を与えてくれた。
緊張がほどける。
そんな中、谷崎さんが一つの疑問を投げ掛けた。







「…おかしい」







何がおかしいのだろう?
私には判らなかった。







「本当に此処なンですか?ええと……」


「樋口です」


「樋口さん。無法者と云うのは臆病な連中で、
大抵取引場所に逃げ道を用意しておくモノです」









え…それじゃあ…









「逃げ道、ないじゃないですか」









此処は行き止まり。
出口は後ろの路地裏に通じる入り口だけ。
捕り方が来てしまえば逃げ場がない。
つまり、此処は密輸業者の取引場所ではない。
なら何故?
どうしてここに?
お兄ちゃんの袖を掴む力が強くなる。
嫌な予感がするのだ。









「その通りです」









凛とした声が響く。
樋口さんは自分の髪を一つのお団子に結い上げる。
再度此方を見たときの彼女の表情は、あのとき探偵社で見たときとは別物の冷たい目をしていた。









「失礼とは存じますが嵌めさせて頂きました。
私の目的は貴方がたです」


「樋口、さん?」








何を云っているのか判らない。
嵌める?目的?
樋口さんはそんな私たちを無視して携帯を手に取る。









「芥川先輩?予定通り捕らえました。これより処分します」







芥川……!?
その名を聞いてすぐに思い浮かんだのはあの写真だった。
次に思い出したのは国木田さんのあの言葉。









ーこいつには遭うな遭ったら逃げろー








「我が主の為、ここで死んで頂きます」









サングラスをかけ、銃を構えた樋口さんはあのときとは別人だった。
私は震えた手で自分の鞄に手をのばす。
でもどれを使えばいいのか判らない。
護身用の道具も、使えなければ役立たずだ。

三十七話「妹への思い」→←三十五話「過保護のお兄ちゃん」



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作品ジャンル:アニメ
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+アリス+(プロフ) - 野良神さん» 誤字の指摘ありがとうございます。すぐに直しますね。 (2018年12月24日 10時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)
野良神(プロフ) - 13ページの異能力が維能力になってますよ! (2018年12月24日 9時) (レス) id: 98ee09b097 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - issuさん» 判りました。こちらの不具合かもしれないので直してみます。この作品を見てくださりありがとうございます (2018年10月13日 21時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)
issu(プロフ) - はい! (2018年10月12日 22時) (レス) id: 9f68ff9d03 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - issuさん» イメ画は設定のところにあるもののことでしょうか? (2018年10月12日 20時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:+アリス+ x他1人 | 作成日時:2018年4月6日 17時

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