【短編集】懐中時計のダーツ盤【あんスタ】 (ページ7)

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セカイの掟ページ7

最悪！

ぽんぽん、と跳ねる金の鞠を追いかけた。ふわふわと忙しなく揺れる重たいドレスのスカートの裾を指先で小さく摘み、足をはしたなくも首の方まで晒す。弓弦あたりには見つかりたくないわ、あれは綺麗な顔でいつもにこにこしてる癖してとってもうるさいもの。
私が後のことを考える間にも、鞠は無情にも私のことなんかまるで知らないふりして奥の方へと跳ねて進む。あれに足でも生えてたら、今頃私の元に走って戻ってきたでしょうに。いやあね、面倒臭いわ。……走るのは苦手なのに。はぁ、と一つ息を整えたところにとどめを刺すようにボチャンと水の跳ねる音がなる。

ちょっと、待って、今のはなに。
足早にその方向へと向かって見れば、ぷかぷかと、大きいとも言えない泉の真ん中に私の金の鞠が大きく輝きを放って浮かんでいる。そこには不相応よ、戻ってきて頂戴！なんて望みも虚しく安定感を強く持ってそれはそこに居座る。

「ど、どうしようかしら……」
「なぁ、今オマエ困ってる？」
「は？」
「イエスかノーで答えろ！」

突然私のすぐ隣の木の上から降りてきたのは、ぼさぼさの髪を束ねもせずに、燻んだ橙の髪をそのままほっといたような印象。みすぼらしい服を着た青年は、顔をほぼ隠してしまっている長い前髪の隙間から覗くぎょろりとした目を、好奇心からぎらぎらと光らせて私を問いただす。

「え、ええ、まぁ……」
「おれが手伝ってやる！あれを取ればいいんだろ？」
「でも……いいの？」
「いや、タダじゃない！おれと一緒にいてくれたら取ってやる」
「一緒に？何処かに付き合うの？」
「いや、ずっとだけど」

おれはそんな安くないからな！そう言って、わはははとか何とか、豪快な笑い方をして彼は笑う。

「で、どうする？」
「……取ってくれるのなら」