108 ページ8
「す、すみません、ちょっと考え事を…」
「僕といる時に他のことを考えるなんて大した度胸だね」
私が考えていたことは今まさに私を睨みつけているあなたの事なんです…と、そう口に出せたら誤解は解けただろうか。
いや、そんなことを言ってしまったら、私がこの人を好きだとバレてしまう。
これ以上好きな人に迷惑はかけたくない。
夕陽が差す道の真ん中で、恭さんはまだ機嫌が悪そうな目つきで私をジッと見ている。
「…やっぱり、我慢できない」
すると、ムッとした顔のままそう呟いた。
「はい？」
「いつか力尽くで、とは思ったけど、いつかじゃない。今すぐ僕のものにする」
「な、なんの話ですか…！？」
その迫力に押されて、私は一歩後ろに下がる。
それでも恭さんは私との距離を詰め、私の右の手首をガシリと掴んだ。
「君を見てるとムカつくんだ。自分のことは隠そうとするし、僕のことを考えているようで何も分かってない。そんな奴のことを僕はいちいち気にしてられない。だから、君の気持ちなんて待たないよ」
恭さんが私の手首を掴むのは、私が逃げずに話を最後まで聞くように拘束するため。
大事な話の時に、私はいつもこの人から逃げ出すから。
私たち以外誰も歩いていないこの道に、囚われた私を助け出そうとする人はいない。もし人がいたとしても、相手は並盛最恐と言われているお方だ。誰も手出しはできないだろう。
どうあがいても、この人から逃げられない。
「あのっ、痛いです」
「僕が君のことを何も知らない訳ないだろ。これ以上僕が力を弱めたら、君なら手を振り払って逃げられる。軽々と君に背負われたこと、僕は一生忘れない」
自分がどうして恭さんから逃げ出したいのかは分かっていた。
恭さんは全部知っている。私がどうやって誕生したのかも、私の体のことも、私の考え方や価値観も全部。
私はこの人に見透かされることが怖いんだ。
なんでも知っている恭さんなら、私の心を見抜いてしまうかもしれないと思ったから。
好きだって気づかれてしまうかもしれないから、逃げたいんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 44人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちゃ(プロフ) - 夢@雲雀さんのムスッがかわいすぎてヤバイさん» またコメいただけて嬉しいです…！ありがとうございます！完結させたい気持ちは山々なんですが、キャラがもたもたしていてなかなか進ませてくれません…^^;(笑)気ままに書いておりますがまたよろしくお願いします！ (2019年2月1日 11時) (
レス) id: a50c7c36d5 (このIDを非表示/違反報告)
夢@雲雀さんのムスッがかわいすぎてヤバイ(プロフ) - 続編おめでとうございます！！いつもニヤニヤしながら読ませて頂いております……！夢主ちゃんが自分の気持ちを自覚して、そろそろ完結か……？と、感動を覚えると同時に少し寂しくもありますが、いつも楽しみに待っております！！無理せず更新頑張ってください！！！ (2019年2月1日 0時) (レス) id: be5de4e45a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：チャ | 作成日時：2019年1月30日 21時
