【RE!】fame ＃六道骸 (ページ6)

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夢で見たものが実際に残るなんてありえない。

彼や彼がいたあの空間は、現実だったとでも言うのか。

“これは夢ではなく幻覚です”

あの青年は確か“幻覚”と言っていた。

そう言われても、幻覚と夢って同じようなものじゃないのかな。それなのに現実にはその爪痕が残ってるって、どういうこと…？

「…うーん…」

…考えても理解できることではないだろうし、追求するのはもうやめよう。私の生活に支障が出るのも困る。“幻覚”なんてワードは無関心生活には不必要だ。

ベッドから降りた私は、部屋を出てリビングへ向かった。

「あらAちゃん、いつの間に帰ってたの？」

リビングにいる葉子さんが、コテンと首を傾げて尋ねてきた。私自身もよく分かっていないから、曖昧に「さっき」とだけ返しておく。

葉子さんは私が住んでいるこの家の奥さんで、育ての親。私は物心がついた時にはもうこの家に世話になっていた。

物心といえば…私は青年の言葉を思い出す。

“幼い頃の記憶が欠落している”

実は、彼の言っていたことは正しい。私は幼少期にこのうちの近くで倒れていたらしく、それ以前の記憶がない。記憶喪失ってやつ。

「今日は和明さん遅くなるって言ってたから、夕飯食べちゃいましょう」

「うん」

自分が何者でどこからやってきたのかも分からなかった子供を、この家の旦那さんの和明さんと葉子さん夫婦は快く家庭に招き入れて育ててくれた。

…今日見たものが夢じゃないとするならば、あの青年は私の失った記憶を持っているのだろうか。

つまり私は、過去にあの人と会ったことがある…。