38 ページ38
二人掛けのソファーはかなりくたびれており、座ると一斉にギシギシといろんな箇所が軋む音がした。
私が座ったことによってソファーが壊れてしまったらちょっとショックだな。そしたら少しダイエットでも…。
「A、余計なことは考えなくて良いですから、話をしても？」
「あ、うん。どうぞ」
私の気がそれたのを、骸はため息混じりにそう言って修正した。
やっぱりいつもみたいに余裕ぶっこいてない。変なの。
「…僕が過去を教えたくないのは、君を傷つけたくないからです」
「前に聞いたから知ってる」
「それでも君は過去を知りたいと思うんですね」
前屈みに姿勢を倒した骸は目元を手で覆っている。だから、そう質問した彼の表情がどんなものだったのかは分からない。
だけど声音は、余裕も自信もない、いつもの骸とは真逆みたいな弱々しい声だった。
そんな風に問われたら、私はどう返すのが正解なんだろう。
「…ごめん」
しばらく考えて、私の口から出たのはその一言だった。この言葉の意味は、骸にも通じているだろう。
きっと骸の望んだ答えは“NO”だったはずだ。それは自分でも分かっていたし、答えにも少し迷った。
でも今は、正直に答えたほうが良いと私自身が判断した。彼だって私がそう言うだろうと予想していたと思う。
「契約違反なのは分かってる。でも、自分のことはこの際聞かなくても良いから、骸たちが一体何者なのか教えてほしい」
きっとどう説得されても、過去を知りたい気持ちは止められない。
自分に言い聞かせてきたけどいい加減認める。最初は今まで通り無関心だったのに、段々とあなた達のことを知りたいと思うようになってしまった。
ずっと大切にしてきた無関心生活よりも、私はあなた達を取ったのだ。
それがなぜなのかは、自分でもよく分からないけど…。
「千種の話を聞いてそう思った、と」
「前からそう思ってたけど、千種に言われてなおさら」
「僕との契約には反抗しておいて、千種の言葉には耳を傾けるんですね。第一、“無関心”である君が僕から千種を庇うなんて」
「別に骸だからとか千種だからとかじゃなくて」
「じゃあ何だって言うんですか」
喧嘩腰で私を問い詰める骸は、ずっと手で目元を覆ったまま。まるで私に顔を見られたくないみたい。
やっぱり変だ。こんなに余裕がない骸、変すぎる。
思い当たる節があるとするならば…。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 38人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：チャ | 作成日時：2018年11月16日 7時
