【RE!】fame ＃六道骸 (ページ28)

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最初に開いたその本はオカルトの本ではなく、なにやら仏教について書かれた本。

「六道輪廻…」

まだ誰もいない館内で、小声でその文字を読んだ。

私の頭に思い浮かんだのは、あの吸い込まれそうな赤色の右目。

骸が私にキスした時、あの時が一番彼と物理的な距離が近づいた瞬間だった。

その時私は見たのだ。あの右目の奥に刻まれた「六」の文字を。

カラコン？生まれつき？色々考えたけど、この本を開いたということは、どうやら私は無意識に、あの目はこの六道輪廻に関係があると踏んだようだ。

「あ、あの…A」

「？」

自分しかいないと思い込んでいたその空間で、突然小さな鈴の音のような声が私を呼んだ。

本から顔を上げると、机を挟んで向かい側に立っていたのは何冊か本を抱えたクロームだった。

「クローム」

「おはよう…」

クロームは挨拶をすると、辺りをキョロキョロと見渡している。

これはきっと、私の向かいに座ってもいいか聞くに聞けない…といったところだろうか。

「よかったら、相席どうぞ」

「……うん…」

顔を赤くしたクロームは小さく「ありがと」と言ってから席に着いた。

それにしても、他に誰もいないんだからどこでも座り放題なのに、なぜここに座りたそうにしていたんだろう。

クロームが持ってきた本の一番上に積まれた「初心者でもわかるイタリア語」というタイトルをぼんやりと見つめながらそんな事を考えていたら、私の視線に気づいた彼女が再び声をかけてきた。

「Aは…骸様のことが、嫌い？」

そう聞かれた話題は私にとってタイムリーすぎて、正直「またその話か」と思ってしまった。

「嫌いとか好きとか、そういうのないから。勝手に現れて私に近づいた人ってだけ」

「でも…その本」

「うっ…」

私の持っている本を細い指が示す。

クロームが反応したということは、やはりこの仏教の本は骸に関係があるってことだ。

無意識にこの本を手に取った…やはり私の失った記憶の中にはあの男が住んでいたのだと決定付けられたみたいで、なんだか負けた気持ちになる。