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真っ白い服を着た私の足元で、草花たちがさらさらと揺れている。
知らない場所だ。草原と、うっすらと霧がかかったような白い空が一面に広がっている。
ここはどこだろう。
「…ん…？」
少し先の方に一本の木が生えているのが見えた。
この木はさっきから生えていただろうか。不自然に私の視線の先に現れたような気がする。
なるほど…これは夢か。
頬をつねると痛みは感じたが、確実に夢だ。
夢の中でこれは夢だと理解すれば眠りから覚めるとはよく聞くが、さっぱり眼が覚める気配がない。
仕方がないから、起きるまでこの夢の中を見て回ろう。そう思い、私はその木に駆け寄った。
近づいて木を見上げると、ひとつだけ実がなっている。
林檎だ。
手を伸ばせば届くかもしれない高さにある赤く色づいた果実を見上げた私は、試しに背伸びをして腕を伸ばしてみた。
しかし、思ったよりも林檎は高い場所に実っていて届かない。
まぁ、いいか。
諦めた私は腕を下ろす。
「取って差し上げましょうか？」
すると突然、背後から声が降ってきた。
後ろから伸びてきた手は、私が取り損ねた林檎をいとも簡単に木からもぎ取る。
「取ってくれなんて頼んでない」
「クフフ、随分と辛辣ですね」
振り返ると、私よりもうんと背の高い青年が林檎を持って立っていた。
どうぞ、と、私に向かってその林檎を差し出す。
怪しさの極みでしかない。不審なその人物を疑いの眼差しで見つめていると、青年の口が弧を描いた。
「食べないのですか？」
私にそう聞いた彼は、取ったばかりの林檎を服の袖で磨いて自らの口へ運んだ。
真っ赤な林檎が唇の中へ消えていく。
お腹が空いているわけでもないのに、私はその光景から視線を外せなかった。
目を奪われる、とはこのことか。
「……」
黙ったまま凝視する私を見かねたのか、青年はもう一度、私の目の前に果汁が滴る実を差し出した。
「食べなさい」
「っ…」
差し出された林檎を受け取ってしまう私。
ゆっくりと唇を寄せ、林檎を一口かじった。
「＿＿赤��さん！」
「っ、はい…」
＿＿一瞬にして、私は状況を把握した。
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作者名：チャ | 作成日時：2018年11月16日 7時
