【銀魂】ロマンスを騙る【短編集】

本日はお日柄もよく。結婚式にはもってこいのうららかな晴れの日であった。もっとも、本日の主役はわたしではない。高校の同級生の結婚式に招待されたのだ。

洗面所で髪を結んでいると鏡越しに、つい今しがた起きてきたらしい高杉の姿が見える。そして彼も鏡越しにまじまじとわたしを見て一言、「悪かねェな。」とだけ言い放ち、若干わたしを押しのけて顔を洗った。

「でしょ？」
「……俺のセンスが」

いま着ているのは過日、まあ何回も着るものじゃないし……と通販サイトで安く済ませようとしたところ、高杉御用達らしきセレクトショップに連れていかれ、試着すらせず。高杉が即決しカードでお買い上げしたパーティドレスなのである。

サックスブルーのサテン生地で誂えられたそれは、着るだけで知的で品の良い清楚なお嬢さん風に変身できる代物で。たぶん高杉は知的で品の良い清楚な女が好みなんだろうな……と妙に納得してしまった。

「えーと、それはとても似合っているという解釈でいい？」
「どうとでも。……けどよ、背中がガラ空きだぜ？」
「冷たっ！」

耳元で無駄に蠱惑的な低い声が響いて、背中から項にかけて冷たい指先がゆっくりと伝うので、ゾクリと肌が粟立った。先程なんとか背中に手を回し、ファスナーを上げようとしたところ、噛むような不穏な感触がしたので途中で断念したのだ。仰るとおり背中はガラ空きだった。

「テメェは不器用だな。一人で服も満足に着れねえのか」
「すみません。どうもありがとうございます……」
「どこまでも手のかかる女だな」

どこか愉しげにそう言って、高杉がファスナーを上げてくれた。きょうは珍しくご機嫌がいいらしい。

「なんでちょっとニヤニヤしてるんですか」
「してねェよ」

「……え、なに？！」

ぼんやりと幸せな朝だなあ……などと思いつつ身支度を進めていると、シュッと首のあたりに何かを吹きかけられた。大好きなにおいが充満する。

「マーキング」

悪そうな笑みを浮かべたその手には彼愛用の香水が収まっていた。好きなにおいだとしても明らかに噴射量が多すぎてキツい。酔ってしまいそうだ。

「……趣味わる」
「……あ？痕遺してほしいのか」

「そういうことするひとだった？キャラじゃなくない？」というわたしのごもっともな指摘にも「早く帰ってこい」などと、どこかご満悦そうに口角を上げて高杉は洗面所を後にするのだった。


＜完＞
.
高杉むずすぎでは……セルフ解釈違いで吐血しそうだったのですが、時間かかったのであげます！てへ(n回目)
.