【銀魂】ロマンスを騙る【短編集】

ネトスト沖田の出現によってこのテーブルだけ異様な空気になってしまった……ことに便乗して、わたしは新歓コンパ代500円をテーブルに置いて宣言する。

「あの！わたしもう帰ります、すみません。今日はどうもありがとうございました」
「え？あぁ、そう……」

先輩も引き気味のリアクションをするだけで特に引き留めてはこなかった。きっともうここの勧誘は受けないだろう。グッジョブ沖田。一緒に来た女の子にも念のため、先に帰る旨を伝えた。返事は呂律が回ってなくてよく聞こえなかった。


□


沖田と店を出て駅まで向かう。ここから家まで40分はかかるのだ。つまり最寄りが同じの沖田も同じくらい時間がかかるわけで。

「で、なんでいるの」
「連絡したのにテメーが無視するからだろィ」

スマホを確認すると、確かに“ツラ貸せ”というメッセージが来ていて、思わず笑ってしまった。

「……警察っていうかもうチンピラじゃん」

沖田はどうやら警察学校に入って以来、初めて外出許可を貰ったらしい。せっかくの外出できる休みなのにわたしに会いに来るなんて、よっぽど友達がいないんだな……可哀想に、などと思うと頬が緩んだ。


「つーか何そのカッコ、大学デビューかよ」
「そりゃ華の一女だし」
「なんかお前じゃねえみてェ」

確かに、今まで私服姿でコイツと会ったことはあまりなかった。その上卒業してすぐに髪も染めたし、いまはメイクだってばっちりしているから新鮮に映るのだろう。

「沖田は相変わらず根性曲がってるね」
「うるせーな」
「どうなの、警察学校は」
「あ〜まあヤバい」
「会話する気ある？」

「……お前は、どうなんだよ」

軽い会話の応酬からふと、そこそこ真剣な声音で沖田がそう訊いてきた。何がどうなのかよくわからなくて黙っていると、「…………男とか……あ〜、ま、お前に限っているわけねぇよな」などと勝手に沖田が自己完結して笑った。なんなんだよ。

「なんかすっごいムカつくんだけど？彼氏できたらLINEに速報入れてあげるから」
「は？テメーの大学デビューはスタートからもう失敗なんだよ、彼氏なんて諦めろ」
「さっきお前じゃないみたいって言ってたもんね？それって大学デビュー成功ってことだよね、よし絶対彼氏作る」

「……あと９ヶ月待ってろィ。そしたら素敵な彼氏様ができるかもしれねーだろ」

沖田が持ってた鞄を軽くぶつけてきた。なんとなく、ふざけあった小学校の帰り道を思い出した。