すぺしゃるしーと Ⅲ (ページ28)

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The 108th seat. ページ28

「櫻井、いるでしょー？あのさ…」

『あのなぁ潤といい、お前らノックぐらいしろよ！居なかったらどうすんだよ』

「ちゃんと、居ること確認してから来てるからいいの！それより、今日早めに上がってもいい？」

『二宮とデートか？そういうのはダメだ！』

「違うわよ！仕事とプライベートは混同しない主義です」

『だったな(笑)二宮が、全然構ってくれないって言ってたし』

「もぅ…和也君ったら…」

『へぇ～和也君ねぇ(笑)』

「私達の事はいいから！あのね、Aちゃんから連絡きたのよ、物件のことで」

『お、来たか。条件に合う物件ありそうな感じ？』

「そうね、特殊な条件ないしすぐに決まりそうだけど…」

『いくつかピックアップしたら、俺にも確認させて？』

「わかった、じゃぁ今日は上がってもいいわよね？」

『おう、よろしく』

中里に連絡が来たって事は

向こうではもう辞令が下りたんだ

その日は仕事もはかどって

帰り支度をしてから

いつもの自販機に向かった

もちろんメニューはカフェラテ

一口飲んだら急に

“今すぐ声聞きたい”

って衝動にかられた

『もう、いいよな…結構我慢したし…』

スマホを取り出して

久しぶりに表示した名前をタップした…

この時間帯は仕事か…

すぐ出なくて切ろうとした時

「もしもし！すみません、お待たせしました」

ずっと聞きたかった声がして嬉しかったのに

仕事だったのかも…とぶっきらぼうになってしまった

『出た…ごめん、仕事中だよね…あの、櫻井だけど…』

「出るの遅くなってすみません。今日、有給使って休んでて、電話から離れてました」

『どこか、具合でも悪いの？』

「いや、そうじゃなくて…荷づくりとか片付けのために、休みをもらったんです」

『そっか、忙しいのにごめんね』

だよな…忙しくさせたの俺だし

「いえ、今ちょうど休憩中でしたので。何か急ぎでしたか？」

『あっ、いや。特に用事って訳じゃなかったんだけど…あのさ、日本に帰ってきたら、ちょっと話しあって、すぐに二人で会えないかな？』

日本に帰ってきたら、すぐ

俺の気持ちを伝えようと思ってた

なんなら、カナダに行く前から

じゃぁ、なんですぐ言わねぇんだよ…

って周りから散々言われたけど…

それは、やっぱり頑張ろうとしてるAの

邪魔をしたくなかったんだ

「いいですよ。私も、お話ししたいことがあるので、お時間とってもらっていいですか？」

『うん、わかった』

♪ピーンポーン

「Aちゃーん、なんか宅配来たけど出ていいかな？」

あれ？この声まさか…