The 98th seat. ページ18
やっぱ、可愛いよな…
タクシーに乗って開いた
スマホのカメラロールには
カナダから帰って来る時に隠し撮りした
Aの寝顔…
自然と頬はゆるっゆる…
[お客さん、お客さん…着きましたよ？]
『あっ…すいません(笑)っと…はい、お釣りいりません』
3千円いくらかのタクシー代
財布のなかに5千円と1万円しか入ってなくて
5千円を出してさっさと降りた
だって、ぜってぇニヤついてたの見られてた…
家着いて、シャワー浴びてすぐに
ベッドに身体を沈めた
朝、休みなのに
いつもよりちょっと早く起きたのは
結構なスピードで飲んでた
Aの事が気になって…
せっかくの休みを…
しばらく戻って来ないから
この土日で終わってしまう
日本での休日を…
ただ、寝て過ごすのは
勿体ない気がして
そういえば、中里が
“全然、話が出来ない！”
って言ってたのを思い出して電話をかけた
『(もしもし、朝早くにごめん。今、大丈夫？)』
「(なんだ、櫻井か…どうしたの？)」
『(ごめな、二宮じゃなくて(笑))』
「(べ、別にそんなんじゃ…それより要件は？せっかくの休日なのに…)」
『(あぁ、Aちゃんのことなんだけどさ。昨日、かなりのペースで飲んでて、恐らく今日は二日酔いなんだよね…だけど、日本で過ごす土日は、しばらくないだろ？中里も、全然話せないって言ってたしさ！午後からでもいいから、ホテルから連れ出してやってよ)』
「(ふふ、やだぁ〜めっちゃ溺愛じゃない！えっ？ちょっと、今ホテルって言った？)」
『(あぁ…家引き払って、出発までホテルらしいぞ)』
「(なにそれ！聞いてない！)」
『(俺も聞いてなかったよ…！まぁ、離れがたくなるってのも、あるみたいだけど)』
「(まぁ、その辺も聞くとして…とりあえず連絡してみるわ)」
『(あぁ…よろしく)』
通話終了後、スマホを乱暴に放り投げた
一応、ソファーに向かってだけど…
電話を切る直前
“そんなに好きなら、さっさと伝えればいいじゃない”
お前に言われたくねぇよ…
言えるもんなら言ってるよ
だけど、昔、お前が言ったんじゃないか…
“Aちゃんは、優秀だけど、いっぱいいっぱい”
あれから確かに成長はしてるけど
今は伝えるべきじゃないって判断した
Aが成長するのに
俺が妨げになるのは嫌だったし
『さて、出掛けるか…』
ソファーに投げ捨てたスマホを拾い上げて
車のキーを片手に部屋を出た
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作者名：二葉(ふたば) | 作成日時：2019年1月15日 0時
