四月の夜は。-12-

563. ページ13

〈rtzuさん、大丈夫ですか？おっきな音楽祭が終わったばっかりなのに全然お休みする時間とれなくて申し訳ないです...。〉

「..ううん、12月は毎年こうだもん。逆に忙しくなかったら不安になっちゃうよ。」

〈最近仕事が終わるとすぐに帰宅されてるので、疲れ...限界きたら本当に言って下さいね。〉

「..大丈夫だよ。ありがと。」





　

あの日

音楽祭のあったあの日から足早に進んでいく日々


次の日になってもこない連絡に

なんだか諦めにも似た様な気持ちで受け入れて


仕事に行けば忙しく過ごせるからとは思うけど

それでも

どうする事できない気持ちを抑えるのに必死だった...



クリスマスムード一色の世界

テレビの収録でもクリスマスソングを歌って

一日一日と近づく

あなたの生まれた日を想った...









仕事終わり

早く帰る理由




渡せる宛のない曲を日々歌い続けた...


わたしが胸に抱えてる気持ちは

簡単に書き表せる様なものじゃなくて

だから

日々行ったり来たりの気持ちと

変わらない想いを

たくさん...たくさん...書き留めた


頭に浮かぶメロディーに歌詞を乗せて

この曲にわたしの気持ちを閉じ込めて...

出来上がったら

あなたを想いながら歌おう...




この冬が終わって

新しい年が来たら

わたしは

もっと強くならないと...



















〈お疲れ様でした！今日は移動が多くて申し訳なかったです。明日はイヴでお仕事たくさんなので早めに終われば良かったですか...遅くなってしまってすいません。〉

家の地下駐車場。

仕事が押して家に到着した頃には23:00を回っていた。


「..全然。逆に時間余ってなくて良かったくらい。」

〈...？〉

「ありがと。明日ね。」

伊藤ちゃんに見送られながらエントランスから入って部屋へと向かって


静かな部屋で

上着を脱いでそのまんまゆっくりとピアノへと向かった...



無意識に動く指

心を落ち着かせるように

ピアノへと向かって



去年の今日...

一人でケーキを買ってソワソワしてた自分の事を思い出して







去年は..あなたにおめでとうが...言えたんだよね...





そんな事をとめどなく思っていたら


ケータイアラームが小さく部屋に鳴り響いた...





時計を見れば0:00




小さく息を吐いた

そして意識して口角を上げて












「お誕生日、おめでとうございます。」



笑顔でそう小さく呟いた。



そして、目の前にある手書きの楽譜を前にスッと息を吸った...

564.→←562.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す