四月の夜は。-12-

562. ページ12

こんな事

しちゃいけない事くらいわかってる

だけど

自分でもどうしていいかもわかんない

ただ


どうしても

この気持ちの行き場所が見当たらない...





いつもならすぐにかけてくれる声が...届かない...

それに...

...当たり前だけど...抱きしめ返しては


...もらえないんだ...




何か...言わなきゃ...

伝えたい事...


言って.....自分。






「.....わたし......わたしも...お祝いさせて下さい。...今年の倫也さんのお誕生日...。...あの...













-少しでいいので会って貰えませんか...？-















...そう..伝えたかった。



けど




言葉にしようと息を吸い込んだ瞬間、フワッと離された体

離れた体がスッと後ろに下がって数秒だけ目が合った

その瞬間、ほんの少し微笑んでくれた倫也さん





でも

その後に続く言葉は


聞こえてこなかった...



そのまま振り返って角を曲がっていく背中を只、見つめる事しかできなかった。


エレベーターから降りて来た人達の声も

今のわたしにはあんまり耳に届いてこなくて

スリッパで佇むわたしは

本当に魔法の解けてしまったシンデレラみたいだった...




少しの間

この場所から動けなくて

その間も廊下を何人も通過していったけど

その中に倫也さんの姿はなかった...

















〈え？！！おズズ？！あんたなんでここに居るの？！〉

声のする方を見上げれば焦った様な顔のぼんちゃんがこっちを見て駆け寄った。



「...あぁ。ごめんね。...戻るね。」

〈..え？ねぇ、彼は？わたしさっき会って、おズズ会えなかったの？！〉


「...ううん、会えた。」


〈.....そう..。...とりあえず楽屋に戻りましょ。ほら、立って。〉

そう言ってわたしの手を引きながらぼんちゃんはヒール片手にわたしを連れて歩いてくれた...

手にも足にもあんまり力が入んなくて

そんなわたしの様子に気づいてるぼんちゃんはわたしの手をグッと掴んでくれていた...





その後の記憶はあんまりなくて




只、

帰りの車内でケータイを開いて

【さっきはごめんなさい。忘れて下さい。
色々、ありがとうございました。】

そう打ち込んで倫也さんのラインへとメッセージを送信した

そこからケータイはショルダーにしまって

もう開きたくないって思った...




色んな事

考えたくなくて

目を閉じて...


だけど

どうしてもこの手のひらに握ってる小さな箱は

手放したくなくて

ギュッと握ったまんま目を閉じ続けた...

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