四月の夜は。-12-

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...もうなにやってんの...ほんと。

片方だけ脱げた足元を見ながら頭をもたげた


こんなんばっか。嫌んなる...。









『もしかして足挫いた？』

聞こえてきた声に顔をあげると少し曇った表情の倫也さんがわたしに近づいた。


「あっ！いえ！無傷です！ただ、自分に呆れてるだけです...。」

『本当に？怪我してないならいいけど。歩ける？』

そう言いながらわたしの前にスッとスリッパを置いてくれた。

「歩けます。本当にごめんなさい...。」

『俺の楽屋にあったやつだけど履いてっても平気だろ、多分。これに履き変えな。危ねぇ。』

「...ありがとうございます。」

片方だけ履いていたヒールからスリッパに履き替えるとなんとも開放感が素晴らしい。

「ぺったんこ最高...。」

そう言って倫也さんを見て少し笑うと、『よかった。』と微笑んでくれたから、大丈夫だと見せる為にもスタッと立ち上がると倫也さんもゆっくり立ち上がった。

『それにしてもすげーコケ方したねぇ。なんで手出さないのよ、急に肩から倒れてくからビックリしたよ。』



「...どうしても..これ...手放したくなくて...。」

そう言って片手の箱と、ピアスを握ってる逆の手の平を開いた...。


倫也さんの目線が手元に落ちて

少しだけ時間が止まって

けどすぐに柔らかく微笑んで『なんでだよ。』って少しだけ困った様にこっちを向いてくれた。



『送ろうか？』

そう言ってくれる倫也さんに

「...大丈夫です。」

そう伝えると、『わかった。』と言った。


そして

『この感覚。しっくりくるねぇ。』

「？」

『さっきまでその靴のせいで俺くらい背あったからさ。』

「あー、...そう..ですね。笑」

『チビだと思ってんだろ。』

「思ってないですよ！笑」

そう言いながら二人で笑い合って、次の瞬間、倫也さんは両手を上げて手のひらをわたしに向けた。


『じゃ、お疲れ。』





...ハイ..タッチ...


そう..だよね

ちゃんとわたしも

「お疲れ様でした。」

って笑って言わなくちゃ...


手のひらに握っていた箱とピアスをソファーへとそっと置いて、倫也さんの方を向いて目線を上げた。

ニコッと笑ってくれる顔を見つめて


両手を...


パシッと....


合わせて.......




頭ではわかってるのに...



わたしの体はこんなに言う事をきかないなんて

思いもしなかったよ...





一歩近づいて


両手はそのまんま


倫也さんの腰へと伸びて


少しだけ背伸びをして


あなたの肩に頬を寄せた...

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