【Arcana Story】魔法使いの話 (ページ4)

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「この木の実はね、食べると美味しいんだよ」

　深い森の中を歩いていく中、リアは木の上の方を指差す。

　よく見ると木の実がなっていた。丸々とした茶色っぽい実で、大きさとしては林檎くらいだろうか。リアは木に登り始める。

「だ、大丈夫……？」

「大丈夫！ほら、とって！」

　リアは五つ程度木の実をもいで、一つずつ投げてきた。それらを受け取って、鞄に入れる。リアは降りてきて、うんうんと頷いた。

「これはね、美味しいし、それに食べると魔法が使えるんだよ」

「魔法？……あー、つまりそのくらい美味しいって事？」

「違うよ！見ててね……」

　リアは右手を私に見せるように差し出した。そして次の瞬間……リアの右手はあたたかく柔らかな光に包まれる。それも一瞬で、光は一点に集中し、やがて小さな火となった。蝋燭の火のような、本当に小さい火。

「え、え？」

　私が驚いている間に火はふっと消える。リアはふふんと自慢気に鼻を鳴らす。

「これが魔法だよ！白蜜も頑張れば使えるようになるって……ほら、食べてみてよ」

　わけが分からなかったけれど……少しお腹が空いていたし、それにリアの言う魔法というものも気になる。何かのマジックだとは思うけど。私は木の実を食べてみた。食感は汁気の多い林檎に似ている。甘さは控えめで、喉が潤う。