出会い ページ44
扉を開けて部屋を出た。
えっと、確か二つ左隣よね。その扉を開ける。
部屋の作りは先ほどの部屋と代わりはなかった。ただ、テーブルには食べかけの非常食や、蓋が空いた缶が転がっていて、生活感がある。
部屋の隅には何か機械が置いてある。発電機だろうか?
「誰?!……って、あら、魔法少女の赤い方じゃない」
扉の近くにいた職員さんが、びっくりしたようにこちらを向いた。若い女の職員さんだ。羊毛みたいなふわふわとした黒い髪と、ねじれた角。
見渡してみたが、部屋には今この女性しかいないらしい。
「こんにちは。あの、カチュアを知りませんか?」
「白い方でしょ?あの娘なら今シャワーを浴びてるの。ま、ひとまずあがんなさいな。何もないけど、ゆっくりしていってね」
職員さんは戸棚から何かの袋と、缶を取り出す。
どうやら食べ物らしい。袋にはパンのようなものが入っている。缶は……どうやらツナ缶のようだ。コップに水道水をいれて、職員さんはそれらを渡してくれる。
食べろ、という事だろう。少し小腹も空いている。ありがたく貰おう。
「ありがとうございます」
「良いのよ。あ、留守番してるのは私の他にもいるから、食べ終えたら挨拶しててね〜」
言うなり、職員さんは機械をいじり始めた。あたしはそれを眺めながら、食事をする。少し……いや、かなり味気ない。味付けは薄いし、パサパサしているし。しかし食べられないわけじゃない。
胃袋に収めて、ゴミを捨てる。袋はゴミ箱に、缶とコップは洗う。
留守番してる、と職員さんは言ってたっけ。そして、他にも人がいる、と。多分、寝室にいるんだろう。
こんこんこんと扉をノックする。どうぞ、と声がしたから、入る。
「こんにちは、えっと……淤加美華璃……A-121-B-1、です」
「こんにちは魔法少女。俺は月白千景。よろしくね」
その男性は、かちかちと何か機械を修理しているようだった。まとめられた緑色の髪の毛が、指先の動きに合わせてかすかに揺れている。
どう次の言葉を紡ごうか考えていると、千景さんはこちらを見ずに言う。
「状況の説明がされたいのかな?」
「は、はい」
「分かった。まあそうだろうとは思ったよ。どうやら君はかなりの時間倒れてたらしいしね」
でもちょっと待ってね。これだけ終わらせるから。千景さんはそう言って、手元の機械を弄る。
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