激突 ページ22
『A-763-Gが暴走しました。付近の職員は速やかにA-763-Gを制圧してください。繰り返します。A-763-Gが暴走しました。付近の職員は速やかにA-763-Gを制圧してください』
無機質なアラームが鳴る。けど、あたし達はそれに耳を貸さずにいた。
「カチュア、今日は誰と遊ぶ？」
「誰にしよう……定番のアインさんとか？」
「アインさんは昨日も一昨日も呼んだよ！さすがに三日連続は迷惑だろうし、他の誰かにしなきゃ。サリエルさんとか、翔太さんとか、シーナさんとか……翔太さんはこの前来てもらったし、今日はシーナさんに来てもらわない？」
今日の遊び相手の相談をしてたのだけど、結局決まらなかった。最近少しずつだけど、職員さん達がぴりぴりしてきているような気がする。皆忙しそうにしていたし。
だからあたし達は散歩をする事にした。部屋でごろごろするのも悪くはなかったんだけど、身体を動かしたくなったから。
alpha寮棟の廊下を歩いて、beta寮棟に向かう。beta寮棟に近付くにつれ、周囲は異様な雰囲気に包まれていった。
少し居心地が悪いけど、売店があるのはbeta寮棟だけだし……。
「わっ」
「きゃんっ！」
そんな事を考えながら歩いていたせいで、誰かとぶつかってしまった。相手は可愛らしい悲鳴をあげて倒れる。
「ご、ごめんなさい！大丈夫ですか……サリエルさん」
「いったぁい、ちゃんと前見なさいよ！目ェ見えないの？！」
かなり怒っている。サリエルさんはじたばたと手足をぎこちなく動かして起き上がろうとしているようだ。
手を貸そうとサリエルさんの手に触れると、その妙な柔らかさと冷たさに驚いて、思わず離してしまいそうになった。
「ちょっと！嫌がらせ？！」
「ごめんなさい！」
もう一度手を繋ぐ。今度は離さずに、サリエルさんを起こす。
「もう！まったくもう！まったくまったくもう！気を付けなさいよ！この会社で誰かにぶつかるほど油断してたらすぐ死ぬってアンタ達も分かってるでしょう？！第一、許可があるとはいえあんまり外出したらだめなのよ！」
ぷんすこしてるサリエルさんの説教を聞きながら、あたしはサリエルさんの手の感触を思い出していた。
妙にひんやりしてて、血がかよってないみたいだった。ぶにょぶにょとした無機質な柔らかさは、生きてる人間のものとはとても思えない。
まるで……。
「聞いてる？！」
「は、はい！」
「なら良いのよ！上級職員はいざという時のため常に収容室に待機しておくのが理想であって……」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 25人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
