出会い ページ20
「カチュア、今日は何をするー？」
「何しよっか……ぐうたら寝て過ごすのはどう？」
「それはこの前もやったよ！カチュアは本当に寝るのが好きだね」
ベッドに横たわってごろごろしているカチュアを尻目に、あたしは外へ散歩に行く準備をする。部屋にこもってばかりじゃ、身体が鈍っちゃう。
売店のあるBETA寮棟への廊下を歩く。カツカツと音が鳴る。何だか楽しい。
「きゃっ」
「うわっ」
でもちょっと浮かれすぎたからか、うっかり誰かにぶつかった。尻餅をついてしまう。ちょっと痛い。
「もー！何なんですのよ！前くらいちゃんと向いてくださいませ！それとも、目が横についてますの？！」
ぶつかった相手はきぃきぃと甲高い声で喚く。黒髪を三つ編みにした、十四歳くらいの女の子だ。変な形の大きな帽子を被ってて、やたらとフリルやレースのあしらわれた、いかにも高そうな服を着ている。背中に大きな翼があるが、彼女も幻想体……いや、上級職員なのだろうか。
ぶつぶつと文句を言いながら、彼女は起き上がる。くりくりした大きな赤い目をこちらに向ける。でもあたしの顔を見ると、ちょっと驚いて、そしてにっこり笑った。
「あら、ご機嫌よう華璃！」
親しげに声を掛けるその女の子。
見覚えのない、初対面の女の子である。誰かと勘違いしたのかな？あたしはちょっと首を傾げる。かなり見目の良い女の子だから、見たらそう忘れないだろうし。
「人違いじゃないですか？」
「ひ、ひどいですわ華璃！」
女の子は涙目になる。何だか悪い事をした気になるけど、本当に知らないのだ。
あたしはともかく、ひとまず謝る事にした。
「ご、ごめんね。でも、本当に知らないの。あるいは、あたしが忘れちゃったのかもしれないけど……」
「そ、そんなー？！私ですわよ！吸血鬼のスージーですわ！この前だってカチュアと一緒に遊んだじゃありませんの？！」
昔の漫画なら、背後に大きくがーん！と大袈裟に描かれていそうなくらいに彼女はリアクションする。あたしは困り切って、とりあえずもう思い出したふりをした。
「思い出した。スージーね。ごめんね、最近疲れてたから……あたしちょっと予定あるから、じゃあね」
話し続けるとばれてしまいそうだから、急いで売店に行った。スージー……あの女の子の事、後でカチュアにも聞いてみようかな？
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