休息 ページ10
『A-082-Gの制圧が完了しました。担当職員はA-082-Gの収容室前で待機してください。繰り返します。A-082-Gの制圧が完了しました。担当職員はA-082-Gの収容室前で待機してください』
その女性はR810と管理ナンバーを名乗った。彼女は下品でつまらないジョークを交えた会話しかできないようで、それはスラムに住む教養のない夜鷹の方がまだ知的で愉快だろうと思わせるような内容だった。顔立ちや身に纏う雰囲気は非常に上品なのも相まって、余計に彼女が醜く思える。
新人さん……アインさんは、彼女にがっちりと後ろから腕をホールドされている。しかも胸を押しつけられて。
アインさんは何とも言えない顔をしていた。上司だから、言いにくいのだろうか。
「あなた達、魔法少女でしょ？話は聞いているわ、まだ小さいのに頑張っているのね。そして二人仲良し。ベッドの中でもそうなのかしら？」
「いえ、別に……」
愛想笑いで誤魔化そうとすると、彼女はきゃっきゃと笑う。鈴を転がすような声だ。その風貌には似つかわしくない、無邪気な笑い声。その拍子に、腰元まである彼女の髪の毛が揺れた。
いや、よく見るとあれは髪の毛ではない。頭から生えているからそうだと思っていたけど……あれは羊毛？明らかに人間の毛髪とは異なっている。
『A-723-Yの捕獲が完了しました。担当職員はA-723-Yの収容室内で待機してください。繰り返します。A-723-Yの捕獲が完了しました。担当職員はA-723-Yの収容室内で待機してください』
アラームが鳴る。これで、脱走した幻想体は片付いたらしい。変身を解除し、カチュアとハイタッチをした。幻想体の制圧は何度もやってるけど、やっぱり慣れる事はない。緊張がほどける。
『M263、Q651、R810は今すぐ第三会議室へ来てください』
「あ、私達これから仕事なのよね。さ、行きましょアインちゃん」
呼び出しのために彼女が第三会議室に向かうのは分かるが、なぜアインさんまで連れて行かれるのだろうか。
背中を向けて去って行く彼女を見ながら、そんな事を考える。なんだか、疲れがどっと出てきた。早く野々華さんのところに戻って、美味しいココアとか作ってもらいたいな。
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