外伝15 ページ29
その日ジェベリアは本来の姿となり夫と戯れていた。
「よしよし」
ジョンに撫でられ気を良くした彼女は、ごろんと仰向けになり腹を見せる。尻尾をゆらゆらとさせながらじっとこちらを見つめている。撫でてほしいのだろう。いつも、ジェベリアは最後にはこうして腹を撫でられたがっていた。
ジョンは焦らすかのように、指先で軽くジェベリアの腹をつぅっと撫でた。くすぐったいのだろうか、ジェベリアはそれを誤魔化すかのように激しく尾を揺らめかせる。
ダーリンは意地悪ね、とジェベリアは言う。しかしその声は全く不機嫌そうではない。期待に濡れている。ジェベリアは、最後には彼がたくさん撫でてくれるのだと知っているのだ。
だがジョンは一向に撫でない。何かを確かめるかのように、彼女の腹に指を這わせるだけである。少し怪訝な顔をしながら。
そこまできて、ジェベリアはようやく不思議に思う。だがジェベリアがそんな顔をすると、それに気付いたらしきジョンはにっこりと笑顔を向けた。美しいが、真意を掴みかねるような笑顔だ。ジェベリアははっとして、叫ぶ。
「幸せ太りは太ったに入らないわよ?!」
「まだ何も言ってないよ」
彼はジェベリアの柔らかい腹を手のひら全体で堪能する。むにむに、ぽよぽよ、むちむち、ぽてぽて……とても触り心地が良いようだ。ジェベリアは必死に弁明をしているが、ジョンはうんうん、そうだね、と相槌を打つばかりである。
その日以来、家の周りをランニングするジェベリアが目撃されるようになった。効果はあまり著しくないようだったが。
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夜(プロフ) - 素晴らしいお話、ありがとうございます。楽しみに待っています (2021年7月22日 13時) (レス) id: 1f55a4bce5 (このIDを非表示/違反報告)
つーちゃん - ください (2021年7月4日 14時) (レス) id: 84f4461b32 (このIDを非表示/違反報告)
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