フォビアコンプレックス2 (ページ37)

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第八十四話　レヴィアタンページ37

胎児を右手に、残骸を背中に抱えて、用水路を泳いで下っていく。

　この残骸、本当に使えないなぁ。いったいどうしてこんなのがアルラウネの殻になったのだろうか。まあ、期待したワタシも悪かったかもしれない。

　エキドナとアントリオンのハーフは死産だったようだ。まあ、妊娠していたエキドナを無理矢理人間に戻したら、そりゃ死産にもなるだろう。母体の方も死んだみたいだしね。一つ気になったのは、母体に死体に白い靄がかかってた事だけど……もうこれは考えても仕方ないか。

　胎児は死んでいるけど、これでも生粋のゼロ生物。ちょっと弄ればすぐに生き返る。そしてもっと作り変えれば、愉快な玩具のできあがり。

「……おい」

　残骸が声をあげる。あれ、いつから起きていたの？そう言いたくて、彼女の目を覗き込む。けど、彼女はワタシから目をそらした。見たくないものを見ないようにするみたいに。少し怯えているようでもある。

「どうして殺せるんだ」

「何が？」

　質問されたみたいだったけど、内容がよく分からない。何を聞きたいのだろう？聞き返してみたら、彼女は言いよどんだ。

　何かを語ろうと口を動かして、そして結局、諦めたみたいに閉ざして、首を横に振った。

「何でもない。やっぱり、答えなんて分かってる」

　自己解決したみたいだ。ワタシは特に興味をそそられる事もなく、無言で用水路を下っていく。このまま行けば、南区に到着できる。南区から東区への移動は簡単だし、まずは西区を脱出しなくちゃ。

　かすかに……ゼロ生物の聴覚をもってもそうとしか言いようがないくらいにかすかに、ワタシのひれが水をかき分けていく音がする。残骸はいつの間にか眠っているようだった。