第七十一話 イヴリン ページ24
ミュータントの脱走、秘密結社の活発化、そんな状況でさえろくに仕事をしない統治者たち。
なんだか眩暈がしてきそうだ。
「遺伝子スキャン完了。イヴリンの入室を許可します」
定型文以外を発することのない扉は、わたしのことを気遣うそぶりも見せずにいつものように開いた。
扉の奥で待つフォビア様は悲しげな表情をしているように見えた。
「……こんにちは、イヴリン。浮かない顔ね」
「こんにちは、フォビア様。あなたも浮かない顔に見えるわ」
わたしの椅子の前に、白いケーキと紙コップが用意されている。
「今日は緑茶とショートケーキにしてみました。気に入ってもらえるといいのだけれど」
「ありがとう、フォビア様」
白く丸いケーキを掴み、口に運ぶ。甘味を食べると疲れが取れるという人がいるが、本当だろうか。
「……ねぇ、私のやり方は間違っていたのかしら」
「それは分からないわ」
フォビア様がひとつため息を吐いた。
この世界の現状を嘆いているのだろう。
「私はいずれ、秘密結社の方々とも分かり合える時が来ると信じていました。統治者たちとも協力しあえると思っていました」
「まだ、全てがだめになってしまってはいないのよ。いくらでも挽回のチャンスはあるはず」
「……それもそうね」
フォビア様はまた、大きなため息を吐いた。
9人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミクミキ(プロフ) - 終わりました! (2019年12月16日 22時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 更新します! (2019年12月16日 22時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - 更新しましーた (2019年12月16日 22時) (レス) id: ed034718e4 (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - 更新しまっす (2019年12月16日 21時) (レス) id: ed034718e4 (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 終わりました! (2019年12月10日 22時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ