フォビアコンプレックス (ページ47)

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第四十六話　フラムページ47

ドロシアの言い放った衝撃的ともとれる一言。その意味に気づいているのかいないのか、フラムは平然とカレーを食べ続けている。

「姉妹の肉……って、どういうことなんですか！？」

ブラウは立ち上がり、怒鳴るように言っていた。これが常識的な反応というものだろう。そう反応されるのを待っていたかのようなドロシアは、ほとんど無表情で話し始めた。

「そのままの意味よ……私は家畜人として産み落とされたの。今フラムくんが食べているものみたいに、食用の肉にされるために生まれてきた子もいるし、ペットにされている子もいるわ」

「そんなのって……」

呆然とするブラウの横で、フラムが口内に残った米をレモン水で流し込んでから言った。

「じゃあ、ドロシアさんは秘密結社の人たちがボクたちの為に買ってきた家畜人？」

「あの人たちがそんなことをする訳がないわ！私は医療用に育てられて、普通の人間に移植するために臓器を取り出される予定だったけれど、そんなことの為に死にたくないって逃げ出してきたの！」

「兄さん、ボクらの仕事、結構早く終わるかもヨ？すっごいガッチガチのディストピア想像してたけど、すんなり家畜人が逃げられるくらいにはゆるーいみたい」

フラムは顔色を変えず、呑気そうな態度を保っている。

「……なぁ、どうしてそんなことが平気で言えるんだ？僕らと同じ人間を食べるだとか、飼うだとか……正気とは思えない！秘密結社が革命を起こそうとしてるのも納得いくよ！なのに！」

「だからって、カレー残すのはもったいないカラ。ボクらが嘆いても、お肉になっちゃった子はもう戻せないんだから、捨てるよりは食べるほうがいくらかマシじゃないかナ」

ブラウは弟に対して何も言い返せなかった。

「……ごちそうさま」

フラムがカレーを食べ終えるころ、ブラウの前に置かれた手つかずの料理は冷めきっていた。