フォビアコンプレックス (ページ43)

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第四十二話　フラムページ43

兄弟が千年の眠りから覚めて、数日が経とうとしていた。

「せいっ！」

「とおッ！」

地下都市の片隅に存在する秘密結社の訓練所にて、二人は戦闘訓練を行っていた。彼らを目覚めさせた者たちによれば、革命に戦闘はつきものだという。そこで、まずは二人の実力を確かめるべく軍事サービスに所属していた老兵レダと共に模擬戦闘を行うこととなったのだ。

「……よし！お前たち、なかなかやるな」

「ありがとうございます！」

「ボクらなんてまだまだだヨ」

「そう謙遜するな。少し鍛えればすぐ実戦にいけるレベルだ」

レダは加齢による体力の衰えはあるが秘密結社実働部隊では第一線で戦っている。それを2対1とはいえ圧倒する程のコンビネーションであった。近接主体のブラウと、遠距離のフラム。誰もが彼らを「救世主」と思えるほどの強さを発揮してしまっていた。
実働部隊の様々な相手と模擬戦を繰り返しながら、目に見えて強くなっていくブラウとフラム。

「よし、一旦休憩にするか」

レダに指示され、水分補給や自主トレなど、皆が各々の方法で休憩に入った。
ブラウとフラムも飴でもなめようかとしていたところへ、二人の世話係が声をかけてきた。

「ブラウにフラム、訓練中すまない」

「あれ、コンラッドさん」

いつも通りの笑顔の彼は、傍らに一人の女性を連れていた。

「あなたは……誰？」

「ああ、彼女は君らが起きたのと同じ頃、ここにやってきてね。……二人に自己紹介してくれるかな？」

コンラッドに促されるまま、彼女は礼儀正しくお辞儀をした。

「私はドロシア・マイヤーよ。あなたたちが、みんなの言っていた『救いの子』なの？」

「はじめまして、ドロシアさん。僕はフラムの兄……多分、あなたの思ってるような人間じゃないですよ」

「そうだよ。ボクはブラウの弟、ふつーの人間。ただ千年近く寝てたってだけサ」

お互いに、どう会話を続けるべきか分からず空白の時間を作っていた。そこでコンラッドが話を進める。

「君たちは同じ新入りだ。俺が秘密結社について教えたり、身の回りのことの面倒を見よう。ドロシアは、この二人に地下世界についてを、君たちは、彼女に地上のことを――君たちの生きていた、今よりずっといい世界について、教えてあげてくれ」

「はーい」

会話を終えたドロシアは、コンラッドに連れられ別の場所に歩いて行った。施設の中を見て回るのだろう。

「さっきの人、美人だったネ」

「そうだね……なんだか、母さんみたいだった」