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第十五話 春川躁子 ページ16

悲鳴。
大きな物音。
人の足音。

ひんやりとしたそよ風に頬を撫でられふわふわとしていた意識は、突然の騒音に引き戻されてしまった。

「なんやねん、もう夜やぞうっさいな…」

下げて持ったままの店の暖簾を一先ず置き、店先からひょこっと首だけ出す。う、なんやこの匂い…
細めた目をさらに細めて、遠くの方まで、じっと元凶を探る。

ふと、オレンジ色が目に入る。
こんな寂れた古い建物ばかりの街並みには目立ちすぎるような鮮やかなオレンジ色。
に、

濃い、赤が……………



「みみこぉ〜!みりあぁ〜!
うち出かけてくるから留守番頼むで!
晩御飯鍋やから吹きこぼれんよう見といて!
誰か来ても開けたらあかんからな〜!」

店の奥に向かって大声で呼びかける。

…………






「返事はァ!!!!!!!!!!!!!!!!???」

「「はっ、はぁい!!!!」」

よろしい。
店の表から出て、鍵をかける。
やはり夏は遠ざかっているようで、もうすっかり暗く、羽織を着ても露出している手や顔が引き攣るような感覚を覚える。
ざっ、ざっと自分の歩く音を聞きながら、騒ぎの方へと足を向けた。









何も言えない。


「……………………………」


ただ、何かを訴えたいかのように唸るような吐息が溢れたのはわかった。


自分はつい先程まで、彼女と「秋も終わりだ」などと話していたはずなのだが…
なぜ彼女が、彼女の営む饅頭屋もろとも消え去っているのだろうか。

周りには「何か」の残骸。
残骸、残骸。
そしてそれを回収して掃除するオレンジ色の防護服を着たお姉さん方。


「………あ、の………飯さん、は……」

「あぁごめんなさい、危ないからあまり外に出ないで頂けるかしら。」

「………はい。すんません」





戻ると、みみことみりあが待っていてくれたようだ。
「あぁ、おかえりなさいご主人様」
「どうしたのご主人様?なんだか元気がないわ」

「………なんでもないで。さ、夕飯にしよか」


店の奥に入っていくと2人もついてくる。
それを見ると不思議と笑みも帰ってくる。


「………鍋、吹きこぼれとるやないか……」

「ちょっ、ちが、みみこがご主人様に着いていこうとするから」
「んな、みりあだって心配してたでしょう!?」


「………ふふ、喧嘩せんとって。これくらい平気やから……な」

ちょうど良かったかもしれない。
とても、夕飯が入るとは思えなかったのだ。
作り直すあいだに、気分も戻ってくれればいいのだが…




見てしまった。
あれは、飯さんの、腕。

第十六話 薔薇宮→←第十四話 レヴィアタン



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キューブ(プロフ) - 更新しましたー (2019年11月9日 22時) (レス) id: ed034718e4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ミクミキ x他4人 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2019年10月14日 19時

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