第十三話 富岡 ページ14
収容施設から、またミュータントの脱走があったらしい。これを鎮圧するのが、あたし達機動部隊……もとい、使い捨ての役割。
無論、この扱いに不満がないわけではない。しかし、これがあたしの役目で、あたしの存在意義で、あたしの生まれた理由で……何より、翠様からの命令だから。
あたしはローズ牧場で生産された家畜人だった。たくさんいたお姉様達と違って、あたしだけ出来損ないだった。半端に抜け落ちた色素、頭も悪いし、センスもない。ここぞというところでミスをする。なり損ないのあたしは、処分されそうになった。生まれた意味すら見出されず、ただの不良品として、捨てられそうになった。
でも、翠様はあたしを買ってくれたの。あたしみたいな不良品に、存在する意味を与えてくれたの。それがどれだけ嬉しかった事か!
あたしは翠様の命令に従うわ。機動部隊として、脱走したミュータントを鎮圧するの。ターゲットを目的地までおびき寄せて、罠にかける。そして麻酔銃を一斉にドカン!
それだけの作業。簡単でしょ?機動部隊員は何人か死ぬけど、代わりはいるしね。勿論、あたしにも。
あたし達がやるべき事は、命令の遂行。脱走中のミュータント、ワスプの鎮圧および捕縛。
最近人気の饅頭屋。そこにワスプはいた。ううん、違うわね。最近人気の饅頭屋があった場所、だわ。ワスプは雑食性ゆえなのか、饅頭屋の建物まで食べてしまったようだった。建築物を食べるなんて、まるで白蟻ね。
当然、店主も死んでいるでしょうね。可哀想に。まあ、それだけ。さっさと任務を遂行しなきゃ。
「はぁい坊や、お姉さん達と遊ばない?」
数多いお姉様の一人が、ワスプを挑発する。彼女は身体中に虫が好むフェロモンをすりつけているし、ワスプが執着するオレンジ色をした防護服も着ていた。
あのお姉様は囮役だ。囮役が目的地へとワスプを誘導し、そして捕縛をする。
勿論、あのお姉様は死ぬ。でも囮役のお姉様はまだたくさんいる。私もそうだ。好きでもない派手なオレンジ色の防護服を身につけているし、お姉様が何人か死んだら、酸っぱい匂いのするフェロモンを塗りつけてからあたしが新たな囮役として出て行くだけだ。
……って、もう死んでる。ワスプってば、かなり素早いなぁ。なんでも、最高時速は音をも超えるとか。そりゃあ、逃げられるわけないわよね。次のお姉様が投下されていった。
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ミクミキ(プロフ) - 終わりました! (2019年11月13日 20時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 更新します! (2019年11月13日 19時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 終わりました! (2019年11月12日 21時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 更新します! (2019年11月12日 20時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - 更新しましたー (2019年11月9日 22時) (レス) id: ed034718e4 (このIDを非表示/違反報告)
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