第八話 フィリア ページ9
「皆を呼び集めたのは他でもない。察しているかと思うけど、ドロモスワークスカンパニーの事について、だ」
会議室の一席に座り、会長の言葉を聞く。形の良い薄い唇が動くのを、どこかぼんやりとしながら、アタシは眺めていた。
「フォボス症候群による変異を活用した遺伝子操作による生物……生体兵器の作成。連中はそれを海外に売り払っている。世界に混乱をもたらしている」
許される事じゃないよね、と、会長……カナデが言った。皆の反応は様々だった。同意するように頷く者。カンパニーの不正に憤慨する者もいる。けれどアタシはそのどちらでもなかった。
世界に混乱をもたらしているだなんて。そんなの、よくある事なのに。見逃してくれないの?ううん、見逃してはくれないのでしょう。だったら、アタシには何もできない。
「そしてそれを指揮しているのは、カンパニーの総帥、シエラ・ディア・フィラデルフィア。今回の目的は、彼の逮捕だよ」
「……それハ、警察の仕事デなくって?」
でも、耐えきれなくなって、思わずそう口を挟む。皆の視線がアタシに集中した。誰かがアタシをたしなめようと、席を立つ。けれど、会長はそれを手で制した。
「フィリア、これはあたし達の仕事だよ。WPSの最終的な目標は、世界からフォボス症候群を根絶させる事。生体兵器で恐怖を生み出すカンパニーの撲滅も、その目標のためのものだよ」
無茶苦茶だわ。
そう言いたかった。しかし、アタシは黙る事にした。さっきの突発的な行動で、皆からの不信を買ったのは分かっていたから。これ以上はまずいわ。
「政府からの許可もとったから。これから、総帥の逮捕に向かうね。戦闘班の皆はあたしのボディガードをしてほしい。ま、穏便に済ませるから、多分出番はないはずだよ」
穏便に、ねぇ。本当かしら?何か厄介な事にならないと良いのだけれど。
嫌な予感がして、ゾクリと背筋が凍る。得体の知れない恐怖が、背筋をつたう。鳥肌が立って、変な汗が沸いた。それを必死に振り払おうと、アタシは頭を振る。けれども、その恐怖は、わざわざアタシの耳元までのぼってきて、そしてこう言うのだ。
本当に何も起こらないと、思っているの?
気分が悪い!喉から舌が押し出されるような、吐き気。アタシは一言断りを入れて、席を立った。顔色も悪くなっていたみたいで、特に咎められる事もなく、アタシは退場した。
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りおーね(プロフ) - 修正終わりました〜 (2019年3月28日 12時) (レス) id: c9f96cbb66 (このIDを非表示/違反報告)
りおーね(プロフ) - 少し修正します (2019年3月28日 12時) (レス) id: c9f96cbb66 (このIDを非表示/違反報告)
薙(nagi) - 祝!続編!!頑張りましょう (2019年3月27日 22時) (レス) id: 43e3ad1e0e (このIDを非表示/違反報告)
零霧―ゼロキリ―(プロフ) - 長めじゃなかったですね、更新終わりました!あと、続編を作る必要があるみたいなんですが…どうすればいいですかね? (2019年3月27日 21時) (レス) id: 64e187c771 (このIDを非表示/違反報告)
雷夜@馬鹿な小説家(プロフ) - 修正完了しました! (2019年3月27日 20時) (レス) id: 4f6eef4efb (このIDを非表示/違反報告)
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