さよならの香り (ページ16)

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救世主ページ16

「ふぅ…荷物をまとめて…それから…」

何回目か分からないため息を吐き、考えたくもないけど後回しにできない例の件

結局一回も“好き”と言ってもらえなかったな

「はぁ…」

「幸せ逃げちゃうよ？Aちゃん」

後ろから肩を叩かれて振り返ると、眠そうに半分ほどしか目が開いてないミンギュくんが立っていた

「あ、ミンギュくんおはよう」

「おは…よ」

驚いたようにミンギュくんの目が全開になり
肩から手を外されたと思ったら
恐る恐る伸びてきた手は優しく私の瞼を撫でる

あぁ…今の私かなり酷い顔をしているんだった

「へへ、昨日帰った後映画見たんだけどそれがすごいよくて」

「…そうなんだね」

何か言いたそうにしてるミンギュくんを苦し紛れな言い訳で遮る

「明日イェリンの誕生日だけど大丈夫そう？」

「あーうん。予約もバッチリ。まあほとんどスニョンがやってくれたんだけど」

「そっか！よかった。スニョン君にお礼しなきゃ」

「…あのさ、何かあったら言ってね。力になれるかはわからないけど」

後ろから控えめに発された
顔は見えないけどなんとなくしょんぼりした顔が浮かぶ

もしかしたら彼は昨夜の自分の発言のせいだと思ってるのかもしれない

「ふふ、ありがとうね。でも本当に大丈夫だから。ていうか、早く行こう？遅刻するよ」

「えっ。あ、ヤバい！走るよ！」

えっ？って言った頃にはもう私の腕を引っ張り走り出した

斜め後ろから見えるミンギュくんの顔はまるで少年のようで自然と頬が緩んでしまう

朝までとても憂鬱だった気分が少し軽くなる

キムミンギュって男は魔法使いみたい

なんてちょっとアホっぽいことを考えながら彼に手を引かれて会社に入って行った