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ハンター用のベッドは大きくて、二人で使ってもまだ寝返りがうてるほど余裕がある。けれど、今の私には、その空白がひどく心細く感じられて。後からベッドに入ってきたアルヴァさんのほうに、そっと肩を寄せた。
私が抱きつくと、彼はひかえめながらもそれに応えてくれる。頬に触れる低い体温に、少しだけ安心したのもつかの間。また世界を割るような音が鳴り響き、私は思わずぎゅっと目をつむって、身体をこわばらせた。
「……大丈夫か」
目を開けると、暗がりの中でほのかに光を灯す瞳がこちらを見つめていた。「なにが、ですか？」聞き返せば、「怯えているようだった」と言われる。ぱっと瞬いた閃光に、アルヴァさんの心配そうな顔が浮かび上がった。静かな夜のような表情にも、その時々で微かな感情の揺れがあることを。最近になって、感じ取れるようになった。
「あ、……はい。その……雷って、ちょっと苦手で」
「……そうだったのか。……ここに来たのも、そのせいか？」
「そう、ですね。ごめんなさい。研究の邪魔になってしまって……」
「気にしなくていい。……すぐに気がついてやれず、すまなかった」
細い指が、そっと私の髪をなでる。まるで、壊れやすい硝子細工にでも触れるかのように。くすぐったくも心地よい、その感覚に、吐息のような笑い声がこぼれた。
「いえ、そんな……雷が怖いなんて、子供みたいですよね」
「いや……気持ちは、分からなくもない」
「アルヴァさんも、ですか？」
思ってもみなかった彼からの言葉に、伏せていた目を上げる。アルヴァさんは顔を私のほうに向けたまま、視線だけをちらりと窓の外へやった。空の恫喝は相変わらず続いており、空気を震わせる唸り声が雨風に混ざって響いている。
「……この音を聞いていると、どうにも落ち着かなくてな。研究にも、あまり集中できていなかった」
「じゃあ……」
「ああ。……私も、君が来てくれて助かったよ」
そう囁いて、アルヴァさんは私の身体に腕を回した。大きな手で背中をさすられて、一本の細い糸になっていた気分がやわらぐのが分かった。怖いことは何もないから、安心して眠りなさいと言われているような。うながされるまま瞼を落とせば、優しい睡魔が頬に触れる。世界を包む雷鳴は、夢の中で、静かに溶けていった。
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KV(プロフ) - ゆずとぽん酢さん» 初めまして、コメントありがとうございます。イタカくんのお話はどれも好きな感じに書けたものばかりなので、そう仰っていただけてとっても嬉しいです…！不定期ですがこれからもちまちま更新していきますので、お付き合いいただければ幸いです。 (4月26日 21時) (
レス) id: 77374e0db2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずとぽん酢 - ま〜、、、本っ当に最高な短編集だことッ！作者様この度は素敵な作品を書いてくださりありがとうございます!!私は特にイタカくんの話が好きです!!! (3月28日 0時) (レス) @page16 id: 55c4e71bc7 (このIDを非表示/違反報告)
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