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「……あれ。君、震えてる。どうしたの？もしかして、まだ僕が怖いの？」
「……い、」
「うん？」
「……さむ、い」
ダメージのせいで、まともに喋ることもままならない。息も絶え絶えになんとかそれだけ言うと、イタカくんは「ああ」と頷いた。
「君、寒そうな格好してるもんね。服も破けてるし。……なに、その顔」
服が破けているのは、イタカくんが乱暴にしたせいなのだが。私がそう言い返すよりも先に、彼は「そうだなぁ」と呟いた。
「じゃあ、僕が温めてあげる。ほら」
細い腕が伸びてきて、ぐい、と抱き寄せられる。もう力が入らない私の身体は、なすすべもなく、そのまま彼のほうへと倒れ込んでしまう。ぎゅっと抱き締められると、嗅いだことのない、不思議な匂いが感覚をくすぐった。森の匂いだ。どうしてか、そう思った。
「どう？あったかい？……なんだか懐かしいな。小さい頃ね、僕が寒い寒いって言ってたら、母さんがこうやって抱き締めてくれたんだ。僕の家、隙間風が入ってきて冬は寒かったから。……でも、母さんがいれば温かかったよ」
少しだけ、寂しそうな声。彼の身体は氷のように冷たくて、ちっとも温かくはならなかったけれど、私は何も言わなかった。心臓の存在が感じられない胸に頬を寄せて、わずかに残った私の体温が、みるみるうちに彼に奪われていくのを感じる。背中に回された手は優しくて、ついさっき、私を嬉々として甚振っていたのと同じものとは思えない。
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KV(プロフ) - ゆずとぽん酢さん» 初めまして、コメントありがとうございます。イタカくんのお話はどれも好きな感じに書けたものばかりなので、そう仰っていただけてとっても嬉しいです…！不定期ですがこれからもちまちま更新していきますので、お付き合いいただければ幸いです。 (4月26日 21時) (
レス) id: 77374e0db2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずとぽん酢 - ま〜、、、本っ当に最高な短編集だことッ！作者様この度は素敵な作品を書いてくださりありがとうございます!!私は特にイタカくんの話が好きです!!! (3月28日 0時) (レス) @page16 id: 55c4e71bc7 (このIDを非表示/違反報告)
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