# ページ2
.
「ねえ、ルカ。そのケーキ、何か分かる？」
「……？至って普通のスポンジケーキだな」
「いや、そうじゃなくて」
やっぱり気がついてなかったか。なんとなく、そうじゃないかとは思っていたけれど。苦笑いを一つこぼして、皿の上を指差す。
「それ、ルカの誕生日ケーキなんだけど」
「……誕生日……ああ、そうか。今日だったか。すっかり忘れていた」
卓上のカレンダーに目をやり、しばし考えたあと、ルカは納得したように頷いた。
「忘れてた、って……もう。自分の誕生日だよ？主役がいないと、なんのためのケーキか分からないのに。夕食の時間には顔出してね。みんなお祝いしたがってるし」
「ああ、分かった。忘れないようにしないとな」
そうは言ったものの、本当に来るか怪しいところがある。どうせ、また作業を始めたら没頭してしばらくこちらには帰ってこないだろうから。夕食の時間になるまで、私がここに残っていたほうがいいかもしれない。
こんな日くらい、休んで他のことをしたらいいのに。けれど彼にとっては、これが今一番やるべきことなのだろう。私には、ルカが語る"偉大な発明"のことは半分も理解できないが、彼が自分の全てを懸けてでもそれを完成させたいと思っていることだけは伝わる。
「ちゃんと来てよ？ルカに渡すプレゼントも、みんなで用意したんだから」
「そうか、楽しみにしておくよ。……君からのプレゼントはないのか？」
「私？……えっと、みんなとプレゼント用意するのは手伝ったけど」
「それも嬉しいが。どうせなら、君からの特別な何かを期待したいところだ。せっかくの誕生日なんだからな」
「忘れてたくせによく言う……」
「さて、なんのことやら」
笑ってはぐらかすルカに、ため息を一つ。私からのプレゼント、か、と考える。
確かに、用意しようと思わなかったわけではない。ただ、何をあげれば喜んでもらえるか分からなかった。私は機械には詳しくないし。そういうのは、他にもっと適任がいるだろう。
「うーん、特別、って言っても……何か欲しいものある？」
「……そうだな」
ケーキを食べ終えたルカが席を立ち、私が座っているベッドのそばまで歩いてくる。隣に腰を下ろした彼は、私をじっと見つめたかと思うと、「君なら、分かるんじゃないか？私が何を欲しいか」と意味ありげな笑みを浮かべた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 62人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
KV(プロフ) - ゆずとぽん酢さん» 初めまして、コメントありがとうございます。イタカくんのお話はどれも好きな感じに書けたものばかりなので、そう仰っていただけてとっても嬉しいです…！不定期ですがこれからもちまちま更新していきますので、お付き合いいただければ幸いです。 (4月26日 21時) (
レス) id: 77374e0db2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずとぽん酢 - ま〜、、、本っ当に最高な短編集だことッ！作者様この度は素敵な作品を書いてくださりありがとうございます!!私は特にイタカくんの話が好きです!!! (3月28日 0時) (レス) @page16 id: 55c4e71bc7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
