99話 ページ3
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"多くの人々は金閣寺の壮麗さに目を奪われ、その参道の脇にある陸舟の松の存在に気付かない"
A「...そっか.....!」
どうして気が付かなかったんだ...!
すると甘春は呼びかけに応じようとしないAへもう一度口を開いた。
甘春「安藤先生!?輸血を、」
Aは言葉を遮って彼女の名を呼んだ。
A「甘春先生...私達は重大な勘違いをしていたのかもしれません。」
甘春「...え?」
Aはモニターを確認し、僅かに目を細める。
すると手術室前でサポートに入っていた五十嵐の声がマイク越しに聞こえてきた。
五十嵐「安藤先生のおっしゃる通りです...これは"金閣寺の松"です。
多くの人々が金閣寺の壮麗さに目を奪われ、その参道の脇にある陸舟の松を見逃してしまうように、"大腸ガン"という大きなファクトに囚われて本当の原因が見えていなかったんです!」
甘春「本当の...原因...?」
彼女の呟きに頷き、Aは続ける。
A「...この場合、"陸舟の松"とは小腸の可能性が高いかと思われます...!」
甘春「小腸.....。...!!」
甘春は反芻した後、ハッとした表情を浮かべ、モニターへ向き合った。
A「実際、S状結腸の腫瘍が大きく血流が多いため造影剤が染まってしまい、出血しているかのように見えました。
...ですが、逆に小腸出血はタイミングによっては造影CTでは発見出来ず見つからないケースがあります!」
そう伝えると甘春は「安藤先生と五十嵐さんの言う通りです...」と頷いた。
甘春「大腸ガンからの出血に囚われて視野が狭くなっていました...小腸出血の可能性も考えられます!」
小野寺「...だとしたらどうすんだ?今の患者の状態を考えるともう時間はないぞ...!」
甘春「それは...」
視線を少し落として口を噤む甘春。
小野寺「...甘春先生?」
彼女の両の手のひらはカタカタと震え、僅かではあるが息が上がっていた。
すると、そんな彼女の手を包み込むようにして握り、たまきは甘春へ呟く。
たまき「...1人じゃないって言わなかった?」
五十嵐「甘春先生!...僕達を信じて下さい!」
甘春「...!」
振り返ると、そこには力強く頷き真っ直ぐな瞳をした技師のメンバー達がいた。
A「甘春先生なら絶対に大丈夫です...!」
そう言ってAは彼女へ微笑みかける。
甘春は皆を見て少し目を赤くした後「続けましょう!」と顔を上げた。
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奏奏奏(プロフ) - きぇぇぇぇ!!さん» ありがとうございます!これからも頑張っていきます! (2019年7月30日 18時) (レス) id: 681665cbc9 (このIDを非表示/違反報告)
奏奏奏(プロフ) - レナさん» ありがとうございます!励みになります´`* (2019年7月30日 18時) (レス) id: 681665cbc9 (このIDを非表示/違反報告)
きぇぇぇぇ!! - ラジエーションハウスは大好きな作品(?)なので頑張ってください!(?) (2019年7月30日 17時) (レス) id: 5d428d39a9 (このIDを非表示/違反報告)
レナ - 待ってました。これからも頑張ってください。 (2019年7月16日 22時) (レス) id: 869c734d75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奏奏奏 | 作成日時:2019年7月16日 19時