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5話 ページ5

冨岡さんと会うことなく1ヶ月過ぎた頃、外はすっかり雪の世界だ。
1ヶ月前も寒かったが、今は雪がある分さらに寒さが強くなっている。
寒さで悴んだ手を、息を吐いて温めて暖を取るが、吐いた息が白くなる。
家の中だと言うのにこの寒さだ。台所に立っているからと言うのもあるのだろうけど。

この1ヶ月、冨岡さんといつ会えるかばかり考えていた。
この前不快にさせてしまったことが気にかかってしまっている。
早く謝りたいのだけど、彼の居場所が分からないので、会いに行くことすらできない。この前聞いておくべきだった。
会いに来てくれないかなとか考えてしまうけど、そもそもまた足を運んでもらうなんてお手数かけれない。
でも会いに来てくれないと謝ることができないのだ。
しかし一向に姿を見ることさえできない。
そんなにお茶を誘ったのが気に入らなかっただろうか。
うーん、と頭を捻らせていると料理の稽古をしてくれている先生が私に声をかけた。

「お嬢様、そろそろ火を消した方がよろしいかと」
「あっ」

考え事をしている間に、ぼこぼこと音を鳴らしている鍋の火を消すと、すぐ落ち着いた。
少し吹きこぼれてしまったけれど、煮物は無事なようだ。
先生が小皿に野菜をいれて、味見をしてくれる。

「…少し濃くなってしまってますが、美味しいですね。腕をあげましたね、お嬢様」

そう褒められて、安堵した。
稽古を始めてもらった頃は真っ黒になった煮物を見て、呆れられていたけど、ようやく認められるようになった。

「お料理の最中考え事はいけませんよ。危ないですからね」
「はい…気を付けます」

その後、明人さん用に煮物を作り直したり、お味噌汁や一品を複数作り、彼の訪れを待った。
味にうるさい先生に褒められたから、明人さんも満足してくれるだろう。

「Aは相変わらず料理が苦手なんだね」
「え…」

私の考えが甘かった。私の作った煮物は明人さんの舌に合わなかったようだ。

「ああ、大丈夫。まだ嫁入りまで時間はあるし、ゆっくりでいいんだよ」
「ごめんなさい…」

確かに明人さんの舌は肥えていると思うけど、そんなに美味しくないものだろうか。先生には褒められたのに。
何がいけなかったんだろうかと考えても分からない。
明人さんに出した煮物は考え事しながら作ったわけではないし、焦げもない。
何が悪いのかと尋ねたかったけど、それを聞くといつもの目で見つめられるだけで教えてくれないから意味がなかった。

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作者名:棺桶には単位をいれてくれないか | 作成日時:2019年10月29日 1時

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