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4話 ページ4

「冨岡さん…?」
「ああ」

私を助けてくれた冨岡さんだ。
まさか彼が訪れてくれるとは思っていなくて、思わぬ来客に拍子抜けしてしまった。

「助けていただいたこちらがお伺いすべきなのに、ご足労いただきありがとうございます」
「いや、用があり来ただけだ、気にしなくていい」

「それは何用でしょうか?」
「傷は痛むか?」

「え?ああ、もうすっかり良くなりました。ただ、傷は多少残ってしまうかもしれないとのことです」
「そうか」

一言呟くと、冨岡さんはこれをと包みを渡してくれた。
包みを開けると、中には少し小さな小瓶。これは…何かの食べ物だろうか。

「あの、これは?」
「塗り薬だ。嫁入り前の娘が傷を残すわけにはいかないだろう」

傷に塗る塗り薬はお医者様から処方されているのだけど…。そう思ったが、ご厚意で持ってきて頂いたんだ。
それをお医者様からもらっているからと返す方が失礼だ。

「ありがとうございます」
「1日一回風呂上りに塗ればいいそうだ。それ以外に余計な塗り薬は塗らな。効果が薄れるらしい」

「え、ああ、はい。分かりました」
「じゃあ」

また一言告げて、冨岡さんは家を出て行った。
え、それだけ?この前のお礼を兼ねて、せめてお茶でも出そうと思ったのに。

「あ、あの、冨岡さん!」
「なんだ」

「よければお茶を飲んでいってくださいな」
「…気遣いは不要だ。失礼する」

くるりと踵を返し、冨岡さんはそのまま振り返ることなく歩いて行った。
冨岡さんの姿が見えなくなるより前に、屋敷の中へと戻りはあ、とため息をついた。
不快な思いをさせてしまっただろうか。今度会う時謝ろう。

しかし1ヶ月待てど冨岡さんと会うことはなかった。

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作者名:棺桶には単位をいれてくれないか | 作成日時:2019年10月29日 1時

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