接吻とフレンド (ページ5)

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先輩のためのジャムページ5

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楽屋に帰ってから美勇人くんには、突然ジュースが飲みたくなったって言った。
別にそんな猛ダッシュで楽屋を出たわけじゃないから、そんなに怪しまれなかった。

“ 貰う日程決めたいから ”と言い、俺は彼女と連絡先を交換した。

新しい友だちの欄に出る、Aという名前。

どうやら彼女は、Aさんというらしい。

「...顕嵐にやにやしてる。」
「えっ、いやしてませんよ。」
「今してたよ(笑)」

うそ、俺今ほんとににやにやしてた？
あの人の名前を知れただけで？

メイク用の鏡を見ながら頬をぺたぺたと触ると、妙に熱くて恥ずかしくなった。

「可愛いでしょ？A。」
「...彼女さんなんですか？」
「あ、」

俺の質問も無視して、ソファから立ち上がった美勇人くんはこちらへ近付いてくる。
そして、俺の後ろに立つと、鏡越しに目を合わせた。

「Aと連絡先交換したんだ？」
「な、」
「だって俺教えてないもん、Aの名前。Aが帰る時にお前の名前知らなかったし、俺がシャワーの間に自己紹介し合ったわけじゃないでしょ？顕嵐そういうのしないし。さっきの、ジュースじゃなくてAだったんでしょ？」

美勇人くんの言葉に、俺は黙るだけだった。

別にいいじゃないか。

彼女は付き合ってないと言っていた。

じゃあいいじゃないか、彼女を俺に取られて美勇人くんに何の損害がある？

例え美勇人くんと彼女が面倒臭いオトモダチでも、俺はマーマレードをいただくだけですから。

「後悔するよ、お前。」
「何でですか。」

美勇人くんがまた、真剣な顔になる。
髪がかかっていて、美勇人くんの目がよく見えない。

「だって、」

「あいつのジャムめっちゃ美味いもん。」

「は、」

「超ジャム作んの上手なんだよね！あ～俺だけのジャム係でいてほしかったのに～、まぁ顕嵐ならいっか。」

「は、はぁ。」

「あいつのジャム食ったら市販のとか絶対食えないから！」

「う、っす。」

“ おすすめはやっぱりいちご～ ”と楽しそうにスキップをして、美勇人くんは次の現場へ向かった。
彼女に貰ったジャムの入った袋を、大切そうに抱きしめながら。

やっぱりいちごにすれば良かったかな。

そう思ったのと同時に、携帯の画面に彼女の名前が光った。

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